一昨日、江戸時代に流行った「赤蛙売り」という商売につい
て、書かせて頂きました。本日も、江戸時代の奇妙な商売
について触れようと思います。
江戸時代の、往来を描いた絵の中に、老人を背負った男の
姿が、たまに見られます。背負られている老人は、まれには
本物の人間の老人である場合もないことないでしょうが、ほ
とんどが、人形です。
これは、「親孝行」なる大道芸をしながら町を巡る、大道芸人
なのです。老いて歩くこともままならない親を、背負うふり。つ
まり、「親孝行」は、しているふり。演技なのです。
何とも不謹慎な話かもしれませんが、それでも収入を結構得
ていたのだから、面白いものです。
まずは、「親孝行でござい」などと言って町を巡り、人を集めま
す。集まったところで、親子のやりとりを、一人芝居でやるので
した。
それだけのことに銭を払う人が沢山いたのだから、かなり芸達
者な人たちがやっていたものと思われます。また、達者でなけ
れば、銭は払わないでしょう。また、こうした不謹慎とも思われる
芸が立派に成立して人々を楽しませていたのだから、当時の人
たちがいかに、洒落とか芸に対して寛大で興味が深かったかも
わかります。
江戸時代の一人芝居で思い出すのが、「独り相撲」の芸ですね。
前にも書きましたが、大相撲の対戦する両力士から行司、呼び
出し、時には客までも、全て一人で演技し、形態模写までやる
のです。これは当時大人気の芸で、専門の小屋までありました。
かなりの芸の力が必要ですが、「親孝行」も、やはり同様だった
のでしょう。