姫路藩主・池田輝政は、水筒を居間に置いて、大事にしてい
ました。ただ、竹で出来ているので、時々壊れました。そのた
め、家臣は言いました。
「近頃、水筒は銅でつくることが、流行っております。銅ですと、
なかなか壊れず、長持ちいたします。銅になさったら、いかが
ですか」
すると池田輝政は、首を横に振って、言ったそうです。
「いたずらに流行を追うな。水筒はしばしば壊れるから、作る
者の生活が成り立つ。銅のように長持ちするような水筒を作
れば、今竹で水筒を作っている職人が生活に困ってしまう。
このままで良い」
そして輝政は、更に続けました。
「世の中が変わったからって、古いいい物までやめてしまうの
は、良くない。私の水筒は、ずっと竹で良い」
部下は言葉を失ったそうです。
非常に、良い話だと思います。皆が同じ物になびくというのは、
私も大嫌いであります。そして、古くても、良い物は、残してお
くべきですね。