戦国時代の戦死者の人骨は、これまでに数多く発見されました。馬も、
同様です。しかし、馬は勿論、人間も骨だけです。つまり、全裸で横たわ
っていたことを、物語っているのです。
実際、その通りでした。戦死者の武具は、その場から剥がされて、回収
されるのです。
回収された武具は、まず、味方のものは、自軍で再利用されます。ただし、
位の高い武士の場合のみ、形見の品として遺族に渡されたり、遺体と共
に埋葬されることもあったそうです。
そして、敵の戦士者から剥がした武具は、戦利品として武具商に売り払
います。そう。戦死者の武具を買い取り、それを修理して再び売りに出す
武具商というのがおりまして、この人たちが、大繁盛していたのです。
タイトルにあります、戦国特需で大儲けした人、それは、武具商でした。
無駄がないといえばないのですが、それにしても、何か戦争にしては、の
どかな気がしますね。当時、戦とはいえ、本当に憎しみ合って戦うというの
とは、ちょっと違う感じだったようです。
だから、相手の首を取って死化粧を施すなどという不気味な儀式も、行な
われたのでしょうね。これは、必死に戦った相手にも敬意を示すための
儀式でした。恐らく独特の死生観に基づいたのでしょう。
「この世では、巡りあわせで戦うことになったが、悪く思うな。あの世では、
仲良く過ごそうではないか」
そんな感覚だったようです。死後の世界というのが、しっかり感覚の中に
確立されていました。だから、戦でありながら、どこかスポーツ感覚、スポーツ
マンシップのようなものが感じられるのです。
そんなわけで、戦の中にもルールのようなものがいくつかあって、きちっと
守られながら戦われていたようなのです。従って、24時間戦うということ
はせず、しっかりと休憩タイム、睡眠タイム、要は攻めてはいけない時間と
いうのがお互いの中で決められていたようです。だから、死者の武具を剥ぐ
といった作業が出来たのです。
ただ、戦国時代も末期になると、そうした世に慣れきった農民たちが終戦後
に怒涛のように群がり、武具をはいで「にわか武具商」になる、なんてケース
も生まれたそうです。