1977年、スペイン南部のフェンテ・アラモという、小さな村で
起こった、実話です。
ミゲルさんという男性は、妻アントニアさんの出産に立ち会って
いました。アントニアさんのお腹には、双子の子がいるというこ
とです。
やがて、アントニアさんは、出産に成功しました。しかし、生まれ
てきたのは、一人だけだというのです。ミゲルさんは、一瞬顔を
曇らせました。
「じゃあ、もう一人は、死産だったということですか?」
当然訊ねます。すると、返ってきたのは、次のような言葉でした。
「いや、双子では、なかったんです。あなたの奥さんは、子宮を
二つ持っていました。もう一人は、一カ月後くらいに、生まれて
きます」
アントニアさんは、子宮と膣を、それぞれ二つずつ持っていたと
いうのです。双角重複子宮といって、膣が入口から二つに分かれ
ていたそうです。
ただその仕切りが薄いために、ミゲルさんは気づいておらず、アント
ニアさんも、自覚していなかったということなのです。そしてミゲル
さんは、何も知らずに両方の膣に挿入し、別々の子宮で卵子がそ
れぞれ受精したのでした。
結局1977年の4月3日に一人目の子が、およそ一ヶ月後の5月
6日には双子と思われていたもう一人の子が、無事に生まれたそ
うです。
日本人も含めて、約2000人に1人の割合で、子宮が二つある
女性はいるそうです。