「はい、その件でしたら…」
クライアントと交渉を重ね仕事が取れた時はめちゃくちゃ嬉しい。ようやく、社会的に信頼も得られてきてるような気もするし、手応えも感じつつある。もっと頑張って、一人前と認められたい。それがボクの原動力になってるんや。
早くお父ちゃんの役に立ちたくて、高校生の時から無理を言うて仕事を手伝わせてもらってた。
今から思えば、あの頃やってた事はホンマ高校生のアルバイト程度の事やったんやと身に滲みた。当時は真剣にしてたつもりやったけど、どっかに甘えた気持ちがあったような気がする。せやから、いつかスゴイ失敗してしまった時もお父ちゃんはボクを怒らんと笑い飛ばしたんやろう。
(ホンマに、カッコ悪かったよな、ボク…)
ヘコんで一人で公園にいたら、彼女が偶然通りかかって励ましてくれたっけ。今となっては、ええ思い出や。
でも、今日はホンマに疲れたなぁ。朝からずーっと打ち合わせで走り回ってたから…。
と、帰宅して自分の部屋に入ると、デスクの上に何かが置いてあるのに気が付いた。…国際郵便?差出人の名前を見て、カレンダーを見て、今日が何の日かようやく思い出した。そうや、今日はボクの誕生日や。
あの子からの贈り物、すぐに開けてしまうのはナゼかもったいない気がして、その包みをそっと指で撫でた。元気にしてるんかな?お仕事、頑張ってるやろか?一生懸命、いろいろ考えて選んでくれたんやろうなぁ…。そんな事を思うだけで、何でか胸がいっぱいになる。キミに会いたい。キミの笑顔が見たい。
そんな事を考えていたら、ボクはいつの間にか夢の中におった。
そこはフワフワの雲の上みたいなところ。何か気持ちがよくて、鼻唄混じりに歩いてたら遠くの方から名前を呼ばれた。
「クリスくーん!」
それは一番聞きたかった大好きな人の声。ああ、キミはそこにいるんやね?
次のキミのお休みはいつなんやろう?今度、こっそりキミに会いに行こう。キミに会って、いっぱいお喋りしよう。
そんな事を思った。
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クリスくん誕生日SSです。
今回はちょっと趣向を変えて、クリス視点・デイジ視点で分けてみました。