ブログを御覧いただきありがとうございます。津軽三味線奏者の佐藤壽治です。
ちょっと前ですがギターで使うカポタスト、カポを作りました。
あれから誰に渡すでもなくそのまま放置なわけですが、素材を見ていて少し思った事を書いておこうと思います。
書く内容はある意味三味線屋さんからは嫌われてしまう事かもしれません。
三味線を作るにあたって、素材によって価格が変わってきます。
材料が高級なのかどうなのか、で変わると思ってくれて正解です。
家を建てる上で使われる木材も一緒ですよね。
杉、松、欅、柿、黒檀などなど、飾りとなる木材や柱や床となる木材にも価格差があります。
希少性なども関係していたり、加工の手間が関係したりします。
三味線の素材として花梨、紫檀、紅木があります。
一番安価で販売されているのが花梨で、その上に紫檀があって、最高値で販売されているのが紅木。
全部、材木の価格差で価格が決まっていると言ってよいと思います。
この三味線を表すのにお稽古用や舞台用などと販売される事もあります。
しかし、本当の使い方はお稽古用、舞台用などといく使い分けは存在しなかったはずです。
それぞれに味わいのある音、特徴のある音がでるので、場合によっては材質が黒檀の三味線なども作られていた事があります。
すべては響きが違う事で、演奏家がこの曲に合う音色を探して使うのが本来の姿だと思います。
有名な話があります。
民謡や歌謡曲でスターになった三橋美智也さんが自分のコンサートに師匠を呼びました。
その師匠の名は白川軍八郎という人で、今は津軽三味線の神様と呼ばれる人です。
三橋美智也さんが師匠である白川軍八郎さんに、当時最高級と謳われた三味線をコンサートで使ってくれと用意した事がありました。
またその当時は撥も今のように鼈甲が大きく貼られたものは無く、手元部分も木を使ったものがまだまだ多かったので、これもまた当時最高級の鼈甲の大きく貼られた撥を合わせて用意しました。
それを触った師匠の白川軍八郎さんの感想はというと…「美智也、これはダメだ」と、音が気に食わなかったそうです。
当時、メインとなっていた材木は紫檀だったようです。
木田林松栄も三味線を作るんだったら紫檀のいい木で作ってもらったものがいい、と言っていた時期があります。
そういう時期があったんですね。
紅木の音と、紫檀の音は温かみ、広がり、丸み、耳に入った時の音の感触が違います。
はっきりわかるのは花梨と紅木で、音色の違いが分かりやすいです。
それを分かって使っている人もいて、使い分けをしているのを見ているとなるほどなと思います。
やわらかく優しさを感じさせるような曲や、春や過ごしやすい季節を思い描けるような曲にはやわらかい音が合うように思います。
であるならば、紅木よりは紫檀や花梨の三味線が合うと思います。
自然の厳しさや激しさを表したいのであれば、音色に鋭さがある紅木の三味線が合うと思います。
要は使いどころ。
三味線の価格や入門用という言葉にそれほど意味はないと思ってます。
あなたが奏でる音はどんな音?
それを表現するためにいろんな手法を選ぶ、その中に材質の選択があると思ってます。
とはいえ。
中には物を見て判断するような人もいるわけで、わたしも高級な三味線を持ってます。
人の価値は持ち物の価値で決まる事もあります。
人間ってむずかしいですね。
ではまた。