昔話の冒頭です。
『むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがおったとさ』
極めて簡素な始まりです。
いつ、どこで、名前は何で、職業はとか細かいところはありません。
しかし、これは重要なことです。
抽象化しているのです。
臨場感を上げるには情報量を増やす必要があります。
しかし、物語は抽象度が高い方が深いアルゴリズムが出てきます。
圧縮しているのです。
圧縮と言いうのは、包摂関係を維持しながら、情報量を落とすことであり、それを抽象度を上げると言います。
文学的には意味を取る、と言ったりします。
例えば、自分の履歴書を思い出してみましょう。
小学校
中学校
高校
大学
会社とその遍歴
趣味や資格など
どれも強力に圧縮された情報です。
その文字を見るだけでさまざまなことが思い出されてくるでしょう。
小、中学校の頃、流行ったものは世代共通のものとして抽象化できます。
受験は経験者に強烈に共通するものです。
学生と社会人の違いなどもそうです。
好きなことに熱中する体験も共有できます。
戦後の日本に生きたということも共有することができます。
そして今、地球に生きているいう状態に抽象化することもできます。
神話や昔話が重要なのはこの抽象化を極めて高いレベルで行なっていることです。
いつの時代に見聞きしても、その内容はその時代に生きている人に役にたつ情報満載です。
人の悩みや考えなど、そうは変わらないからです。
そういう意味で神話の世界に生きていると言っても過言ではありません。
古いからといってバカにせず、神話や昔話に触れてみましょう。
新しい発見がそこにはあるはずですよ。
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