脳はいろいろなダメな癖をもっています。
とにかく計算を省略したいし、サボりたいのが脳だからです。
そのため放っておくと決定論的な世界観を支持したくなります。
複雑系の世界ではわれわれの頭は混乱してしまいがちで、プラトン主義的にイデアの実在を前提に計算を組み立ててしまします。
脳の癖ですね。
しかし、この世界は決定論的な世界ではないことはもう100年以上も前に科学的にわかってしまいました。
われわれの頭がパラダイムシフトできていないだけです。
この世界は量子論が言うようにランダム性であり、さらに複雑系です。
では量子論におけるランダム性とは何でしょうか?
ざっくりいえば、次の瞬間に何が起こるかは神すらもわからないということです。
不確定性の原理ゆえにです。
不確定というのは無知なわれわれから見ても、次の瞬間が不確定だけなのでなく、全知の方から見られても原理的に不確定なのです。
神すらもサイコロを振るのです。
全宇宙において、すべての空間で次の瞬間に何が起こるかわからないということです。
とはいえ、それほど突飛なことがおこらず杞憂にすむのは、確率があるからです。
確率を大量にあつめるときわめて予測可能なものになるのです。
ひとつひとつの要素はバラバラでも、大量に集めるとわかりやすくなるのです。
これを大数の法則と言います。
サイコロをたくさん振れば振るほどその確率は1/6に整理されていくやつです。
膨大な回数の試行によって、あたかも予測可能に振る舞うのです。
ほぼすべての確率はガウス分布に従うという恐るべき結論です。
ランダムが秩序に変わる瞬間です。
ガウス分布(正規分布) Wikipediaより
データが平均値の付近に集積するような分布を示す。
なのに、そのガウス分布を奇妙にすり抜けるのが複雑系(ブラックスワン)です。
ほんのわずかな変更が大きな違いにつながることがあります。
ちなみにここでカオス理論を持ち出すこともできますが、カオス理論とは初期値鋭敏性であり、全治がみれば計算可能になってしまうというものなので宇宙のからくりとしてはちょっと不適切です。
確率のほとんどは綺麗なガウス分布を描き、われわれが観察する世界もとても秩序立っているように見えます。
それが決定論的な世界にみえる理由です。
だからこそ、明日もまた日は東から登るのですが、十分に長い時間をかければ量子論的効果がでてきます。
ようは脳の癖である決定論的世界観では世界を間違って理解してしまうので、脳のコストはかかりますが、ランダム性と複雑性を入れた理論を頭に叩き込んでおく必要があるのはこのためです。
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