漫画「陰陽師」が面白いことは揺るぎないと思います。

 

原作者の夢枕獏さんもおっしゃているように、

原作を超えた漫画

と原作者自身が評しているのも素晴らしいと思います。

 

文字だけではいまいちピンと来ない場面たちを

まるでそこにいるかのような不思議なタッチで描ききった漫画です。

(しかも陰陽師の技たちも学べるすばらしさ)

 

おどろおどろしい鬼たちのほうがコミカルで(特に菅原道真、ぜんぜん怖くないです)

現実のほうがシリアスなタッチはすごいと思います。

力と力の対決に落ちいらなかった点も漫画として素晴らしい。

 

が、おしむらくは9巻くらいからの展開が個人的にはあまり面白くはなかった(特に11巻くらいから)。

私的には「エメラルドタブレット」をひいた表現だと思いました。

 

エメラルドタブレットとは

錬金術の秘法が記された、文字通りエメラルドの板のことです。

(現存するものはなく、アイザック・ニュートンが訳したものが有名です)

 

>引用開始

(ニュートン訳 エメラルドタブレット)

 

これは真実にして嘘偽りなく、確実にして最も真正である。
下にあるものは上にあるもののごとく、

上にあるものは下にあるもののごとくであり、

それは唯一のものの奇蹟を果たすためである。
万象は一者の観照によって

一者に由って起こり来たれるのであるから、

万象は一つのものから適応によって生じたのである。
太陽はその父、月はその母、風はそれを胎内に運び入れ、地はその乳母である。
全世界におけるあらゆる完成の父はここにある。
それが地に転じるならば、その力は円満となる。
地を火から、微細なものを粗大なものから、

非常なる勤勉さで丁寧に分離するがよい。
それは地から天に昇り、ふたたび地へと降って、

上位のものと下位のものの力を受けとる。
この方法によってそなたは全世界の栄光を得、
それによって一切の無明はそなたから去るであろう。
その力はすべての力を凌ぐ。

それはあらゆる精妙なものにも勝り、

あらゆる堅固なものをも穿つからである。
かくて世界は創造された。
これに由って来たるところの驚くべき適応、

その方法(もしくは過程)はここにある通りである。

ゆえにわたしは全世界の哲学の三部を具するをもって

ヘルメス・トリスメギストスと称される。
太陽の作業についてわたしの語ったことは完遂し畢る。

 

>引用終了


私には後半の漫画「陰陽師」はこれに見えます。

賢者の石を得るための秘術を記しているわけです。

 

ちなみに

下にあるものは上にあるもののごとく、

上にあるものは下にあるもののごとく

は先日のブログにでてきた、梵我一如とか、一即多多即一と似たような意味です。

 

漫画でも安倍晴明は最終的に「賢者の石」を手に入れて

祝福されて大団円という終わり方です。

 

しかしいくら、

曖昧なる事を説明するに一層曖昧なる事を以って、

未知なる物を説明するに一層未知なる物を以って

という錬金術の教えがあるにしろ、

ちょっとわかりずらくね?

というのが感想です。

 

それはストーリーの文脈が決まってしまって、

そこに清明のエピソードとキャラクターを貼付けていったために、

せっかく息づいていたキャラたちの

脈動が無くなってしまったからだと思います。

(生きている感がない、陰陽師エピソードを広げる方がよかった、でてくるキャラがみんな悟ってしまっているような感じでちょっとやりすぎ)

予定調和に物事が進みすぎていて、ちょっと引いちゃったというのが感想です。

(ジョジョ第6部の一周した宇宙に生きているかのようです)

 

同様にたくさんの読者を置いてけぼりにもしたとも思います。

 

そこは、エメラルドタブレットの真にまで迫れてないからだと考えています。

これを理解するためには、

膨大な科学の知識が必要です。

錬金術=ケミストリー(化学)なわけで、科学の知識は必須です。

訳をしたのがあのアイザック・ニュートンという古典物理学最強の科学者なわけで、

感覚的に(神秘体験だけで)読み解くのが難しいのがエメラルドタブレットです。

(ニュートンも錬金術師だったのでしょうね)

 

なのでエメラルドタブレットの表面をなぞってしまって、言葉が刺さってこない。

内側に入れていないので他者に理解させれるような「すごみ」がなくなってしまったと思います。

(前半は陰陽師というものを他者へ理解させられるすごみがあったと私的には思います)

 

このすごみが平成の陰陽師の大ヒットにつながったと考えています。

(漫画を読むだけでその背後にある真に陰陽の技に触れることができるのがすごかったし、デフォルメした世界はエンターテイメントとしても面白かった)

 

ゆえに、漫画読んだからといって錬金術のことがほとんど理解できないってことになります。

ここは残念だな~と思ってしまいます。

 

ギリシアの神ヘルメスとエジプトの神トートが同一視されるのでエジプトに行ったのはわかるんですが、

行くならエジプトじゃなくて、中国、インド、シュメールとたどってくれるとよかったんじゃないかと

勝手に思う次第です。

(あくまで陰陽師の文脈でたどったほうが面白かったんじゃないかと、

シュメールで錬金術と符合していくくらいが丁度よかったのではと)

 

まあ、一読者の戯れ言ではありますが。

(私が漫画の解釈を単に大きな勘違いをしているかもしれませんし)


 

陰陽は日本に古くから根付き、影響し、独自発展していきます。

その光と同時に闇も引き継いでいるのが私たち日本人です。

日本人のDNAに色濃く残っている陰陽の技を現代にも引きつぎつつ

役立たせて行きたいと思います。

 


もし、このブログを読んで陰陽師に

興味を持たれた方がいらっしゃれば

とてもうれしいことです(^。^)

 


是非一度、ご自身の目で漫画「陰陽師」を読まれることを

おすすめします(^^

 

(陰陽師系のブログはまだ書きますが、漫画の感想はこれで終了します)

 

ではでは~。