私は、涙を我慢していました。

泣くのは家族の役目であり、あたしは違うと。

それがあたしのモットーでもありました。

なぜか?

仕事中に泣くとその後の仕事に支障が出るからです。

泣きはらした目で、他の患者さんには会えません。

そう思い込んでました。というか、決めてました。

でも、受け持たせていただいた患者さんが旅立つとき、その強い思いよりも、もっと強く、泣くという行為が勝ちました。

その時、家族の方に言われた言葉。
何年たっても忘れません。

ありがとう。
泣いてくれる看護師さんがいるなんて。
この人は、幸せだわ。
最後までこの人の手を握っててあげてくれないかしら?

今までの感情がとめどなく溢れだしました。
お互いに、泣きながら患者さんのことを話し、お疲れ様、頑張ったねと体をさすり、手を握りながら、患者さんは旅立たれました。

この一件があってからも、なるべく泣かないようにはしてます。
でも、感情に身を任せるのもいいことだと思っています。

家族ももちろんですが、医療者も、こうしてあげたかったという後悔の念を持ちます。

みんなポーカーフェイスですが(泣かない)、心の中は後悔の念でいっぱいです。

そんな後悔の念を解放してくれるのは、患者さん家族です。

ありがとう。

この言葉に癒されます。

ありがとう。

魔法の言葉です。

ありがとう。
旅立ちの立ち会いにあたしを選んでくれて。