・前置き・
誰が何を信じようと本人の勝手ですし他人に迷惑をかけなければぜんぜん構わないと思います。




あるがままにさんのスピリチュアル批判の記事を久々に見て触発されたので、自分が2年前に交流のあったとあるスピリチュアル好きの人について語ろうと思う。






当時自分はA型事業所で働いていた。


にんにくのスプラウト栽培と車のパーツを組み立てるのが主な作業で、他は外部農園での作業などもあったが、自分は行かなかった。


そこでは前回話した通り気さくに話しかけてくれる人もいて、作業も覚えることはあったけどそんなに難しくはなく。


充実してるなぁと思いつつ入って1ヶ月経ったくらいに、その人は事業所に入ってきた。



名前は仮にKさんとしておこう。



小柄でマスクをつけていて眼鏡で、態度も丁寧。



好感の持てるタイプだった。



しかし作業をこなすのはお世辞にも得意とはいえず、複数ある作業内容のうち比較的簡単にできることだけやっていた。


Kさんは自己紹介の際、「ニンニクのストラップを最近手にいれたばかりで、にんにくの栽培をしてるとこに来るなんて運命を感じてるんですが~」



思えばこの時からすでに片鱗は見えていたのだが、あーこの人なりの冗談なんだなぁ~。なんて思っただけで気にも止めなかった。



その日の午後、作業の合間に他愛もない会話をしていて、確かKさんの彼氏と自分の誕生月が同じだという話題になった。



「へー。偶然ですね」


自分そう言うと、彼女はこう言った。



「運命を感じますね!」



???


????????


????????



その後事業所の退所、病気の発覚、長期入院等いろんなことがあったが未だにこの時以上の混乱に陥ったことはない。


困惑はありつつも当時はスピリチュアルの存在すら知らず、変なことを言う人もいるもんだな……と思うくらい。



Kさんとは事業所への送迎コースが同じということもあり、ちょくちょく話をするようになり、LINEを交換するまでになった。



今日はお疲れさまでした、だとか、職場での悩みを話したりだとか、他愛もない話だったが……正直とても満たされていたように思う。



それでも不満や違和感が全くなかったわけではない。



ある時、料理の話題になった。
詳しい流れは忘れたが、たしか向こうがおすすめの料理云々のことを言い出し、自分がそれに



「いいですねーいつか作ってみたいですね~」
と(相槌を打つ感覚で)送った。



するとすぐさま、十数枚もの写真連続で送られてきたのだ。



内容はその場で書きなぐったと思わしき料理のレシピメモ。まるで読めたものでない箇所もあった。



厚意を拒むのも悪いよな、という思いもあって礼を返したが……



関係ないが彼女は文の語尾に必ず( ^ω^ )をつけていた。
スピリチュアルと関係あるわけではないだろうが、なんだか鬱陶しかったのを覚えている。



困惑しつつも自分の相手をしてくれる彼女に対し、自分は好意を持つようになっていた。



当時からそれはない!と思ってはいたが、写真を送ってきた件やよく話していること、それに『運命』発言がきっかけで(こんな言葉を使う機会といったら男女関係以外考え付かなかったので……)



Kさんはひょっとして自分に好意を持っているのでは……?



と勘違いしてしまったのだ。



そのすぐ後、勘違いをさらに補強するかのような出来事があった。



彼女は親交を深める意味で、利用者同士で食事にでも出かけたいと言っていた。



だがその話に乗ったのは自分とNさんだけ。Nさんは僕によく話しかけてくれる優しいおばちゃんだ。



当日になってNさんも予定がとれなくなり、断念されるかと思いきや……Kさんと自分の二人で出かけることになったのだ。


正直、うれしかった。



それまでにない経験だし、何より彼女が理解できない世界に住んでいるということに気づいていなかったのだ。



と同時に、不信感や違和感もあった。



これは交友の無くなった今も、いや今でこそ思っていることだが。



彼氏持ちの身で男と二人で出かけるなんて、何故そんなことを平気でできるんだ?



彼女と話す中で自分は、時おり彼氏の愚痴を聞かされていた。



やはり僕に気があるのか?



そんなことあるはずない、だけど……



もしかして何か企んでいるんじゃないか?



内に秘めた思いと、不信感は心の奥底で募っていった。



その日出向いたのは牛丼屋……次にパスタ屋。



緊張しつつも楽しい時間を過ごす。



最後にたどり着いたのはなにやら怪しげなアクセサリー店。

 
パワーストーンや奇妙な人形等、胡散臭いものを売っていた。


そこでKさんはなんだか変な人形を買って、後日Nさんにお土産だといって渡していたと思う。



スピ系について色々と知った今でも思うが、彼女はいい人だ。

知り合いの障害のあるお婆ちゃんを事業所で働けないかと所長に紹介してあげていたのはとても印象に残っている。



ある日彼女に、悩みを相談したことがあった。



「何を思っても茶々を入れられ、まるで頭の中に他人を飼っているみたい。なんとかする方法ないですか」。



これは今でも消えない悩みだが、昔ほどは気にならない。相手にせず放置することにしている。
所詮自分が過去に体験した悪意を無意識のうちに再現しているだけで、相手をしても一人相撲になって疲れるだけだ。



彼女はカウンセラーに相談するといいと、とあるカウンセラーのLINEアカウントを紹介してくれた。



今思い返すと胡散臭さしかないスピリチュアル系自称・心理カウンセラーだ。



藁にもすがる思いで相談のLINEを送り、後日返事がきたものの、内容はまるで覚えていない。



カウンセラーに提案されたのが現実的な解決手段でなかったことだけは覚えている。



まあ記憶に残っていないということは、大したことは言ってなかっただろう。
おそらく心がどうこうとか、気持ちの問題とか……そういった類いだろうか。


だが実際に起きている問題は具体的に動かなければ解決しないのだ
現実逃避して問題を放置してしまえるほど僕はいい加減には生きられない。
問題があると気になって気になって仕方がないのだ。
それが悩みの種になることも多々あるのだが……



それからまた月日は立ち、9月頃だったろうか。



きっかけはよく覚えていないが、確か彼女がまた運命がどうこうとか言いだしたんだったと思う。



何度も何度も聞かされていた言葉に、積もり積もった不満が爆発した。



運命運命運命運命!いい加減にしてくれ!



彼女の言動について事業所のスタッフに相談すると、直接話し合ったら、ということになった。


「あなたの言動には不可解が多すぎる。変な宗教にでも入っているのか?」 



彼女は首を振った。



話し合いは終わったが、どうにもスッキリしない。



作業が終わり、家に帰ってから酒を飲んだ。



そうして思い立った。



すべて吐き出さなければと。



自分は吐き出しきれてない。いちばん重要なことを。



そしてLINEで思いをすべてぶちまけた。



「あなたのことが好きだ」と。



当時放送されていたアニメ、ヘボット!のこのスタンプを添えて……


心底バカなことをやったと思う。



当然ながら彼女は困惑していた。



その後LINEは相互ブロックになり、職場でもいっさい話さなくなった。



前回11月頃から利用者が一般就労になり自分は次第に孤立していったと書いた。


だが孤立したというよりは次第に利用者の中にグループができて、皆自分が属するグループの人とばかり話すようになった、という方が正しかった。



自分がよく話していたのは食事の誘いを受けたNさん、Nさんと同じくおばちゃんのSさんの二人で……B型事業所にいるときもそうだったのだが、どうにも自分はおばちゃんと話すのがいちばん気楽なようだ。



Nさん・Sさんプラス自分の3人グループ、おしゃべり好きのグループ、一番複雑な作業(僕はさせてもらえなかった)をする古株グループ。



そういったグループができていく中、Kさんはいつも一人でいたように思う。



年を越してからは人と話しているのを殆ど見なかった。



そして去年の4月、彼女は別の事業所へ行った。



結局、半年間一度も会話をすることはなかった。





~~




スピリチュアルがどういうものなのかを知った今、彼女の孤立の理由を自分なりに考えてみる。



スピ系のカウンセラーはありのままの自分を受け入れよう、何も考えるな、といったことを(思考放棄させてもっと依存させるために)教えているようだし、彼女は考えることや努力することを放棄してしまったのだろう。


作業が出来ないのも運命。話す人がいないのも必然。


すべて運命ということにして、仕方がないと思ってしまえば解決できないことは何もない。



そうなる気持ちは分からんでもない。

あるがままの自分を受け入れよう、なにも考えるな。これらの言葉は最もだ。


だがそれは苦悩を乗り越えた上で釈然とする言葉であり、言葉だけ聞いたって意味はないし、逃避の理由にするなんてもってのほかだ。



そんな何もしようとしない彼女に対して自分は無理をしすぎた。



交友の幅を広げようと事業所の作業を全て覚えようとし、事業所にいる皆のすべてを受け入れようとした。



それがうまくいかなくて、結局事業所をやめることになった。



結局のところ、頑張りすぎも頑張らないのもよくないということ。
なにごともちょうどよい、が一番。



ちょうどよい、に向かって自分はほどよく力を抜けるよう努力している。




~~




Kさんが事業所を去ってから1年。

彼女は今どうしているだろうか。

運命がどうこうの言って、また誰かを困惑させているのだろうか。
それともスピリチュアルな同僚を見つけて、楽しくやってるだろうか。

1年経って冷静になれた今、彼女に言葉を送りたい。

運命に負けないで

たった一度だけの人生を

何度でも起き上がって

立ち向かえる力を送ろう

(山下達郎/希望という名の光)



Kさんが運命なんてものに囚われず生きられますように。