昨年の大きな目標だった「和服着てウィーンのステージで歌う」夢は叶えられず、心身ともに不調きたしてしまったことは無念きわまりないのですけれど、そのことを追い求めてきたことで得られた喜びもあります。良かったこともふりかえり今年の新たなチャレンジにつなげてゆければと思います。

 年初のカミングアウト以来、お着物でお出かけできる機会が増えました。着物初心者には所謂「着物警察」は厳しい存在ですけど、私にはなくてはならない存在でした。帯が落ちてしまうことはしばしば、帯のたれがひん曲がったりしても気づかずにいたり、そんなときにお優しいお姉さまに声かけていただき直していただきました。着付けの先生に「習うより慣れよ。」といつも言われていて、「直してもらう。」ことの大切さも目に沁みました。また男子のままでしたら声かけいただくことなかったかたから着物を褒めていただいたり、「ご自分で着られるの?」、また「私も着付け習っているの。」などと言ってもらえる喜びを感じていました。更には「着物の着れなくなるから私の着物もらっていただけない…」と言ってくださるかたもいました。また「習うより慣れよ。」を実践するには美術館や観劇、コンサートなどが最適、私ひとりがお着物のことが多かったけれど、わくわく気分でした。また亡くなった母が年末にテレビで視ていた辻井伸行くんのコンサートに母の着物を着ていったときは「一緒に聴いている感」いっぱいでした。

 洋服で女子的にすごしているときは気持ちが何かそわそわしているのですが、和服のときは「着物着ているんだから」と、何かしら落ち着いている感じがします。着物の力ですね。

 そして何より初「海外で和服」です。どうやってパッキングするのか、雨がふったときどうするのか、石畳の街並みを歩くには草履ではなくショートブーツで、などなど初めて着物生活を味わいました。大変だったからこそ思い出深いし、次回もまたとの思いがわきたちました。ちなみにパスポート写真も女子的で、出入国審査ですんなり通れたことが確認出来たのも成果のひとつです。

 初めて着物物語、そんな一年でした。