この作品、シリーズ第二弾だってこと知らなかった。最近の映画に疎かったので、私は観終わってからそう知った(笑)。

 

当日、フラーっと映画館の前を通り、なんとなくきっぷ(言い方が古い)買って観た。しかもよくみたら今日が上映最後。わずか1週間ほどしか上映しないというこの上映期間の短さよ。

 

それにしても、この「なんとなくみたい」っていう気持ちを大切にしていきたいと思う。こういう思いを抱けるように、心に余裕を持っていないといけない。当日の予定は当日決めるっていうことが1年に1、2回はあってもいいのだ。

 

 

最近は映画でも予約制が当たり前のように導入されていて、フラーっと映画をみに出かけるなんてことがなかった。もう、この十年ぐらいなかったかのように思える。

また、映画館に映画を観にいくことも年に1回あればいい方になってしまった。これも時代の流れというか、自分の趣向の変化だろう。一時は、一年に映画館で150本ぐらいを観ていた時もあった私がこのざまなのだ。誰とも会わず1日に3本みることもざらにあった。

 

さて、この映画、見ようと思ったのが、なんと言ってもあの橋爪功さんが出ておられるから。私はこの名役者さんが大好きなのだ…。どうしても芸歴が長すぎる方なので、ファント呼べるほどの華やかな鑑賞歴などないがとにかくファンなのだ。出番の少ない脇役でもまー光るのだ。過去作品で、主役の人を差し置いて、この方の印象しか残らなかったという作品もまあまあある(主役の人には失礼だが(笑))。

 

しかもポスターでの序列というか、その位置関係から、主役級の役ででてらっしゃると分かれば出番もそれなりにあることはわかるし、巨大スクリーンで見るしかない!

 

案の定というか、もう、想像以上に素晴らしい芝居だった。キャラクターもこのかたにぴったりだ。山田監督の「家族はつらいよ」シリーズに重なる役どころでもある。頑固ジジイ的なところがあって、時と場合によってはかなり太々しいけど絶対に憎めない。一見もの静かでつまらなさそうな顔をしているが、本当はユーモアがあって冗談を連発する。いっつも自然体で、アンチエイジングなんてしない役どころだけど、それがかえってかなり若々しくうつるのだからかっこいい。このキャラクターは最強なのだ。本作でも実年齢よりもいくらか若い役をやってらっしゃる。10歳も若い役じゃないけど、もしそうだとしても全く違和感なし。

 

橋爪さんの芝居はなんて素晴らしいんだろう。言葉でズバッと言えるもんじゃないが、この感慨が自分なりに得られれば次の橋爪さんの作品も絶対に観に行こうと思える。

あの横顔の笑顔、特に好きだ。腹に一物ある感じで、ニコッというよりかはにたっと笑う、あのイタズラ好きの少年のような笑顔がたまらない。こんな素敵な愛敬溢れる笑顔ができる大御所の役者さんを私は知らない。

 

今回の役はこの笑顔がピッタリの役だった。太々しいところもあるけれど憎めない。絶対に憎めないし、どんだけ辛辣なことを長年連れ添った奥様(高畑淳子さん)に言っても、嫌味ったらしいじーさんの感じがゼロなのだ。これがたまらない。

高畑さんとの夫婦コンビも最高だ。み初めて、あ、このお二人が夫婦役なんだって知ったぐらいの、不勉強ものだったのだが、はまっていた。

 

そしてこの映画の主人公は正真正銘高畑さんなのだが、あ−、本当に素晴らしかった。高畑さんが映画に出ておられるのは実は初めて観た。それがこの貫禄。ラストの「愛の讃歌」を歌われるシーンは文字通り鳥肌だった。うまかったなー。あの貫禄。声もあり得ないぐらい悠々とでてらしたし、そのお声がまた美声なんだよー。観てからもう2週間以上たつににまだこの感慨。あーいい映画観たなーっていう余韻がある映画こそが最強だと思う。

たとえ細かなセリフや展開は忘れても、あの映画のあの場面、あのラスト良かったなーって、何ヶ月、何年経ってもフッと思い起こせることができればそれでいい。そのほかは別になんでもいいかなって最近思うようになった。話のすじを覚えているってことがあまり重要じゃないかもなーって。

 

本当に最高だった。この方以外にこの役を演じられる人はまず考えられない。この女性の役は誰もできない!同じポジションの大御所有名女優さんは数多くいると思うけど。素晴らしかった。このかたは女優さんではなく歌手でらしたっけと、本気で思ったぐらいだった。正真正銘の女優さんなんだけど。

 

ラストの展開なんてもうわかっていたのに、それをここまで驚きをもった演出で見せてくれると言うのはやっぱりすごいことだと思う。しかもシャンソンの名曲なのに、自分でしっかり訳した歌詞で、ほぼ自分の言葉で歌うって言う発想がまた「らしい」のだ。あー高畑さんは、かなりのインテリだからこう言うこと、趣味でもされていてもおかしくないって、容易に想像がつく。

 

 

そして、家族って、やっぱりいいなって言うことにも改めて、気づかせてくれる。

剛力彩芽さんと橋爪さんの父娘の言い合いとかもなんか好き。口喧嘩してもすぐ修復ってすごい力だと思う。昨夜激しく口喧嘩しても、次の朝起きたら何ごともなかったかのように「おはよー」って言える家族関係。あー素晴らしい、すごすぎる。丸一日もたたないうちに修復って、早すぎやろって。

これが家族の本当の絆だと思う。私は、個人的には考えられないからなおのこと憧れる(笑)。あーでもこういうふうに今後はしていきたいと思うな…。口喧嘩してすぐ仲直り。素晴らしすぎる。

 

肝心のテーマである、終活については、正面から真剣に重々しく考えるっていう訳ではなく、あくまでフッと考えさせられた。この押し付けがましくない、あくまでちょっと一緒に考えてみませんかっていう、優しいメッセージ性というか、そういう感じがまたよかった。ま、シリーズ2作目っていうこともあるので1作目はもっとしっかり訴えているのだと思うけど(笑)。こりゃ1作目を早く見ないと…。