おそらく3回目の鑑賞。と言っても何年かぶりの鑑賞なので細かいところはきれいさっぱり忘れていた。
なんといってもラストの成敗シーンの迫力は極妻映画史上ナンバーワンだと思う。何もかも、最強最高だと思うね。日本のアクション映画でも伝説の部類に入ると言ってもいいんじゃないかな。
というか、このラストシーンは、敵の親分の三回忌法要での修羅場だったんだねえ。てっきりお葬式のシーンだと思いこんでいた。「仁義なき戦い」のラストじゃないんだから(笑)。
ま、大傑作というのではないが、手堅い作り。今回は志麻姐、ニ度も殺されそうになる。死ぬわけないのだが、1回目の襲撃シーンはまさに命からがら助かった感じでリアルだった。まさかの車椅子姿もあり。
脚本もツボを押さえた作りで飽きずに観れる。だが終盤にかけてはやや急ぎ足ではあった。いきなり、「1年後」ときた(笑)。
最後ののぞみの綱も絶たれ、あとはもう堪忍袋の緒が切れるだけ。なーんにも怖いもの無しの精神で、派手にやっちまうしかないね(笑)。この爽快感。これぞ娯楽映画。
撮影に木村大作さん、音楽が服部克久さん。いやーこの映画音楽、大好きですね。めちゃくちゃ雰囲気出ている。
ただ、冒頭、モノクロでの回想シーンや、ナレーターの解説を入れてくるあたりは、すごくわかりやすくていいけど、チープな作りになってしまうのは否めない。そこまで懇切丁寧に解説してくれなくても、その程度ならこっちで想像は容易にできるけどとひとりぼやいた。
またどうしても解説が必要なら、最初にバーっとテロップで表示してくれた方が…とは思う。
いかにもテレビドラマ的な感じで、どうかな…というのはある。やっぱり映画は重厚なものであってほしいから。
ベテラン降旗監督作だけど、ま、監督の意向だけでは映画は作れないもの。いろんな力が働いているんだろうから仕方ない(笑)。
今回のメンツは、極妻志麻姐さんの旦那さんが高島忠夫さん。11代目ミクラ組組長。お気の毒に、冒頭で豪快に死なはる…。この殺され方のシーンもインパクトあったな…。豪快にヘリで襲撃って、いやー悪どいねえ。「引退の花道」も叶わず。
組のナンバーツーが山下真司さん。その次の幹部におなじみ世良公則さん、清水宏二朗さんら。志麻姐さんの右腕ともいえる女の子に斉藤慶子さん。斉藤さんは山下さんの極妻でもあり、お腹に赤ちゃんもいる。あまりにもかわいそうな役というだけで特に印象に残る役ではないんですが、まあそれにしても非の打ち所がない綺麗な顔立ちですよね…。
世良さんの妻が川島なお美さんで、その愛人が西川峰子さん。
山下真司さんって、熱量多めの過剰な芝居が売りなのかもしれないけど、ちょっと過剰すぎで、さすがに見ているこっちはひどく疲れた(笑)。セリフは棒読み感あり。インテリヤクザの役だったけど、インテリな感じがあんまりしない。一番大事な冷静さとスマートさが欠けている気がした(笑)。これじゃ武闘派の世良さん組と変わらないんじゃないか。
西川峰子さんはいつもうまいよなあ。出番は他の女優さんに比べ遥かに少ないのに、強烈に印象に残る。
こう言ってはなんだが、和服美人でお綺麗で女の色気、艶っぽさがすごくある方なんだけど、派手さはなく、目が覚めるほどのとてつもない美人ではないところがこの方の魅力でありミソである。
「愛人道」、「極道のオンナの道」を歩めない、小料理屋の女将役で、フツーの女性っぽい感じがすごくよかった。妻役の川島なお美さんの若々しさ、可憐さ、圧倒的な美貌と華やかなイメージが見事に対をなす。
川島さんの女優オーラも白眉。この方は本当に「ザ・女優」という称号が似合う方だった。テレビのバラエティ番組でもお馴染みで、タレント業も積極的だったが、やっぱり本当の女優だった。映画にももっと出てほしかった。
関西出身の方じゃないのに、極妻映画ならではのどぎつい関西弁がめちゃくちゃ堂に入っている。若い頃から本当にうまい方だった。今回はお色気が少ない極妻だったなと思っていたら、最後の最後に大サービスシーンが待っていた(笑)。さすが、大胆極まりない。
対する悪役は、中条きよし×あいはら友子夫婦。
なんと、中条さんは1万5000人の組員を束ねる新興ヤクザのトップ。手下に安岡力也さんら。あ、対する志麻姐さんの組は、300人かそこらですからね。これじゃもう戦いにならない。
中条さんの美形っぷりとドSぶりは凄い。目の動かし方といい、とってつけたようなキザな表情の作り方といい、いかにも腹に一物ある感じの悪役特有のカッコの付け方が、またまたイヤミでいい。
キョウワ会(…漢字わからない)という組織の三代目を襲名したばかりで、文字通り組織のトップだから、嫌な役目は全部妻か、手下にまかせっきり。
自らの手は汚さず、卑劣なイジメにしか思えない悪行を側から見て黙って楽しむ。このドS男っぷり(笑)。この時の不敵な笑みがまたいい。
どきっとする美しい顔立ちとは裏腹に、ドスの効いた低い声がギャップがある。貫禄ありすぎ。この当時の中条さん、私は特に好きだな…。うん、確実にタイプだ(笑)。
ただ、セリフ少なめで出番も敵役としては少なめで、存在感を大いにアピールできる機会が少ないのは残念。
それもこれも、嫁役のあいはらさんが完全にイカれているオンナ役で、中条さんの役を食ってしまっているから致し方ない。もう、とんでもない狂犬女役だからさ(笑)。
ほんと、あいはらさん、この役にハマっている。表情がもうイッてしまっている。極妻映画史上でも、指折りに目立つ極妻だ。クセが強すぎる悪役ぶり。
もう、出てきた瞬間、思わず笑っちゃうぐらいぶっ飛んでいる。こういう無茶苦茶なオンナ、いかにも極妻映画に相応しくて大好き(笑)。
ま、天下の志麻姐さんを向こうに回すんですから、キャラが濃くて、貫禄ないと始まらない。本作には、好敵手にも相棒にもなる、極妻常連メンツのかたせ梨乃さんは出ておられませんからね。
上に立つ者の器量はなくとも、敵としての存在感を見せないと面白くないですから。
上から下まで真っ赤な服装や、「これがわての名刺がわりや!」と言って、志麻姐さんに並々お酒を注ぐシーンや、指詰の強要、酔っ払って手下に怒鳴り散らすシーンや、斉藤慶子さんへのリンチシーン含め、もう伝説のシーン多し。でっかいクラブのオーナーなので、宝石ジャラジャラ、常にドレス姿で金持ちアピールのファッションがまたいい。
それにしても、このオンナ、常にキレてハイになっている状態のシーンしかない(笑)。中条さん、こんな嫁さんの尻に敷かれててかわいそっ。このテンションに付き合わされる配下の者はもっとかわいそうだけど(笑)。
残念ながらこの夫婦が、互いに惚れ込んでいる、もしくはそうでなくてもそれ相応の絆があるとはちょっと思えない演出だった(笑)。巨大ヤクザ組織のトップの男の嫁さんがこんなちっちゃい器量でキレやすい人というのも、リアリティゼロだけど、、ま、主役は志麻姐さん側だからさ、細かいことは気にしなくていいんだよな…。
それでも、中条さんは、ラストの成敗シーンでは、鮮烈極まりない印象を残した。もう、素晴らしすぎてこのラストシーンだけは繰り返し繰り返し、死ぬほど見たもん(笑)。
志麻姐さんの必殺片手打ちマシンガンで真正面から蜂の巣状態にされ、血塗れで息絶えるシーンでのなんとも言えない色気。やっぱりこの方の魅力は色気にかぎる。ここまで色気のある死に方できるのは、やっぱり中条さんのルックスだから。それに「間」の取り方がうまいよなあ。かっと目を見開いてすっと綺麗な死に顔で息絶えるところとか。
もう、死に方が絶品中の絶品。この方はもう、顔とスタイルがいいからそれだけで華があるし、黒の紋付袴も、ダブルのスーツも似合うし最高じゃん。
あと、本田博太郎さんが、山下さんを取調室で徹底的に痛めつけるシーンも迫力あり。えげつない、怖いデカだよ。
そして、今更いう改めて必要もないが、岩下志麻さんの貫禄。そしてその圧倒的な美しさ。鼻筋が綺麗で鼻梁が高くて、横顔が特に好き。
もうその芝居は素晴らしいに尽きる。セリフ回しは変わらずいい。ほんとうにうまいに尽きる。1作目と比べると、随分癖のある独特のイントネーションの関西弁になった。これも進化だ。
とりあえず、この方なしでは何も始まらないのだ。
たった一言の、しかも何気ないセリフで、過去も現在も未来でさえも、全てを語り切る。これは名女優だけがなせる技。
高島忠夫さんとの固く結ばれた絆、長年の夫婦愛を描写するシーンはそこまで多くないが、「惚れ抜いて一緒になった仲や。(旦那を殺されて)悔しゅうないはずがないやろ」と怒りを持ちながらも静かに吐く台詞の持つ説得力と言ったら半端ない。
本作では、旦那さんが殺されて、さめざめ泣いたり、手下の女の子の前でも弱みも見せる。
自分の身代わりで命を落とした組の女の子の死にも号泣して、心から嘆き悲しみ落ち込む。いっつも冷静で強いだけが極妻ではないと、はっきりと描写されているのがまたいい。何があっても、強い女のイメージで通ってしまうんけどね。
後半では、淡々とではあるが、ぼつぼつ泣き言、弱音も吐く。普通の女といか、人間的な極妻ぶりも垣間見ることができる。
相変わらずの我慢劇の極地をいく本作。組のトップが立派で賢くても、若い奴らや武闘派がひとたび怒りに任せて突っ走ってしまうと全てが終わる。ヤクザ映画の定番のネタです。
壊滅的な打撃をうけても、その度に何とか立ち上がろうとする志麻姐さん。かっこいい。
あ、余談だけど、大切な組の資金を引き出すためのキャッシュカードをポスト投函するのはちょっと不用心かも(笑)。
面白かった。