DVDでは二回、映画館で1回の合計三回鑑賞。

 

この映画、やはりいい…。ただ、少々かったるいところもある。でも結局は、いい映画観たなと、心から満足できる作品。
これが何よりも重要だ!うん(自己納得)。

 

高倉健さんはやっぱりこういう無骨な役がいい。もう何をおいても自分を貫き通す役がピッタリハマる。嫌なことは嫌ときっぱり突きつけて生きていくのがなんとも清々しいのだ。そりゃついていく奥さん(加藤登紀子さん)は大変だよ。でもそんなこともお構いなしに、結局筋を通す男にいい女はついていくのだからそれでいいのだ(笑)。でもこの映画、久々に見たけど、健さんにお子さんがいたということを忘れていた(笑)。健さんには、あまりにも子持ちのイメージがないのだ。この映画では、加藤登紀子さんの存在感も相まって、奥さんがいらしたということはちゃんと記憶していたが、お子さんもいたんだなってようやく思い出した。後は、伊丹十三さん演じる、めんどくさい先輩風を吹かす兄ちゃんもいたなーって。こういう上から目線のとにかくめんどくさい人が、いるっていうのが実は結構重要だったりするんだよなー。

それもそのはず、高倉健さんの映画ってのは、健さんに盾つけない先輩とか上司がいるっていうことで、健さんが忍耐に忍耐を重ねて、人間的に苦味を発して美しく輝くところが最大の魅力であるから。なんていうか上からぐいぐいと押さえつけられることによって、健さんという映画スターの場合は、人間性が磨かれていくっていうんだろうか。これは確か、倉本聰さんも指摘されていたはずだが、とにかく、立場が上の人間がいるってことで輝く、独特の立ち位置で輝く大スターなのだ。この映画でもこの役は高倉健さんにしかできないと断言できる。だからこの映画が私は好きなのだ…。

 

相手役の大原麗子さんは息を呑むほど美人だけど、役柄のさよさんは、あきらめが悪すぎて残念(笑)。そういう意味で、大原さんの登場シーンは、大目に見てもダレる感じ。

演技がどうのこうのじゃない。大原さんは演技はいつも間違いなくうまい。このさよというキャラクターの見せ方が、何度見てもうーん…って感じ。この女性、健さんにも、自分の旦那さんと子供にも、はたまた健さんの現在の奥さんにも、そして挙句は函館警察にも、迷惑をかけすぎなのだ(笑)。

最愛の健さんのことをあきらめきれないのはわかるが、実の子までいて、それでもあきらめんのはちょっと同情がしにくい。しかもまだ子は幼児に近いのだ。独身のままだったり、別の人と結婚したものの結局離婚してたり、子もいないのならまだわかるが、彼女のキャラクターにまったく共感するところがないので、大原さんのシーンになるたびにああ、まどろっこしいとやきもきしてしまった。

 

映画の後半ともなると、感涙もののいい台詞やいいシーンが多いだけに、これがすごくもったいない。オープニングだって、軽やかな、素敵な音楽が流れてすごく雰囲気だし、いいところがたくさんあるからなおさらね。


個人的には、健さんと田中邦衛さんが渓流釣りにいくシーンで、健さんがこの大親友に感謝の言葉を改まって述べるところが好き。もうね、無条件にいいのだ。男同士の友情ってやっぱりいいよなあ。幼馴染みで、野球部でバッテリーまでくんだ仲で、いまさらそんな堅苦しいことをいう関係じゃないくせにと思うが、どうしてもあの瞬間口に出さずにはいられなかったんだろう。

 

あと、やはり田中邦衛さんとのシーンで、かつて自分を左遷させた上司の男を許す許さないの話延々としてるところ。

本心を語れる友がいるって、それだけdすばらしい。これも憧れる。ほんといいよなあ。

 

また、ちあきなおみさんの芝居は天才的だ。彼女にカラオケスナックのママの役がこんなに似合うとは。当時は30代後半かな。実年齢にしては凄く貫禄あるけれどなんかかわいいし、けばけばしいメイクも似合っている。歌の才能だけじゃない。芝居の才能もすごくあったよな…としみじみ。当たり前だが、進水式で歌うソーラン節は鳥肌もののうまさ。

 

愛する旦那さん(郷鍈治さん)を早くに亡くして事実上の芸能界引退。悲劇的だった。これだけ明るい女性の役がズバリハマって、役者としても成功をおさめていた方なのに。

 

「人生、お酒で助けられるときもありゃ、お酒で命を落とすときもある」という、劇中の左とん平さんの台詞はまあ沁みる。彼にとって愛する妻(大原麗子さん)を奪っお酒は憎い。奥さんはお酒に溺れて死んだけど、そのお葬式の日は、彼はお酒を飲んでその力に徹底的にすがる。長い人生において、よくある一場面。

 

そんなこんなd、ああ、やっぱり沁みる映画なりと思ったのでした。