私の勝手な探訪ルール、公共交通+徒歩で到達しようとすると、ここは大変である。最寄りのバス停は、隣の和歌山県となる日本唯一の飛び地の村、北山村のおくとろ公園で、ここから寺までは3km程。しかしバスは1日上下各2便しかなく、朝方に北山村へ着くと帰りは夕方まで間がある。そこで他のルートを調べた所、おくとろ公園から3km強離れた三重県側まで歩けば別の路線バスがあり、1時間程は早く帰途につくことができると分かったので、往復で違うルートを選択した。

北山村行きのバスは熊野市駅から乗る。県境を越える道中は、山間部の曲がりくねった細道が連続し、運転手さんも大変そうである。これでも以前に比べれば道路が整備されて楽になったというが、それでも1時間もかかって最寄りのバス停、おくとろ公園へ到着する。ここには熊野川の支流である北山川が滔々と流れており、温泉、宿、キャンプ場、道の駅などが固まってあって、この村の観光スポットになっている。

 

 

さてここから歩き。まず上瀞橋という名のつり橋を渡るがこれが怖い。揺れは大したことないが、足元がグレーチング(網目)で川面がしっかり見える。高い所がそれ程得意でない私は躊躇したが、迂回したら恐ろしく手間がかかるので、下を見ず意識せず、恐るおそる渡り切った。この川が県境、三重県側に入り林に囲まれた細道を進む。道中1台の車にも行き会わなかったくらい人気がない。熊にでも行き会うのではないかと大変心細かったが、しっかりと舗装された道であり、何の支障もなく40分程で寺のある小森という集落へたどり着いた。

 

 

 

山間の小さな集落で人家は30~40軒あるだろうか。しかし空き家があって外に出て農作業している人もほとんど見かけないので、いわゆる限界集落に近いのかもしれない。目的の清水寺は、集落の中でも高台の山沿いにある。寺の建物の外観は周囲の人家とそれ程変わらないが、隣接して墓地があったので迷うことなく到達できた。

 

 

 

こちら宗派は曹洞宗、ご本尊様は阿弥陀如来である。境内には、平屋の民家風な作りの本堂の他に、歴代住職の卵塔、お地蔵様等の石仏、また稲荷社があるが、目立つものはない。しかし後で町史見て分かったことだが、中世建立(1394年)の大乗妙典塔が門前にあったり、17世紀代の手水鉢があると書いてあったので、かなり古い歴史をもっていそうである。古代から杣仕事のために集落が開かれ、それに伴って開山したのではないかと想像される。

 

 

 

 

 

さてこちらの境内は手入れが行き届いており、ご住職もお住いの様子であった。せっかくなので、御朱印を頂けないかと玄関で声を掛けたが不在の模様。苦労して来たところではあるが、こじんまりとした境内では特に時間をつぶす見どころもなく、30分程の滞在で寺を後にした。

 

 

 

 ここからは蛇足の復路記。3km程来た道を戻り、バスを降りた所にあるおくとろ公園で時間を潰す。道の駅の食事処で昼食をとり、それから温泉に入って昼寝してしっかりと休憩。それでもまだ時間に余裕があって、夏の1日をのんびりすごすことができた。それから帰りのバスに乗るため、北山川沿いの道路を上流へと3km程歩き、川を左岸側へ渡った県境を越えた大沼口バス停から熊野市駅行のバスへ乗る。復路も急坂・細道。バス酔いしそうなくらい揺られ、1時間弱で到着した。苦労はした分、とても印象深い探訪となった。(20188月探訪)