JR中央線鶴舞駅から市街地を1km弱歩く。大小様々なビルが建ち並ぶ一画に、そこだけ昭和期の雰囲気たっぷりな民家が見えたが、これこそ目的地である。お寺らしい建物は一切無く、賽銭箱すらない。ただ玄関戸の上には山号額が掲げられ、「飛薬師清水寺」と書かれた表札が立て掛けられている。火災に遭った際、飛んで逃げたと言ういわれを持つ薬師仏を本尊として祀る。
またこの寺院は、織田信長の家臣だった林秀貞の言い伝えがある。彼は京都清水寺に日夜参詣したところ、とある功績を挙げることが出来たので、京都清水寺の前立本尊をもらい受け、自身の地元であった清洲城下(愛知県)に同名寺院を建立したという。その後清洲城が破却されるのに伴い、名古屋城下に移され(現在地とは別の場所)今日に至るのだという。
この様に全国には、京都清水寺との繋がりから同名寺院となったものがいくつかある。真偽の程は分からないが、源氏物語にも出てくる超有名寺院との繋がりにより、自身の寺院の霊験をアピールしようと、大切に語り継いできたのではないかと想像される。(2012年3月訪問)