今日の「筆洗」の書き出しには一瞬、どきっとさせられた(東京新聞 062223)。
「タイタニック号のデッキチェアを並べ直す」という英語の慣用句がある。タイタニック号とはもちろん、一九一二年、氷山に衝突し、大西洋に沈んだ豪華客船である▼沈みゆく船の中で、散らばったデッキチェアを今さら並べ直してみたところで役に立たぬ-。慣用句はそんなたとえで大惨事での無益なふるまいという意味で使われる▼
もっともこの後にはちゃんとおわびがあり、その後は観光潜水艇 タイタン(submersible Titan)の発見に向けての懸命な努力が実ることを祈っていると綴られている。
Rearranging the deck chairs on the Titanic は、「(沈むという)この期に及んで細かい細工をすることは無意味だ」("to busy yourself with pointless tasks instead of facing the real problems"—マクミラン英英)という意味のイディオムである。
語源は無論、1912年に氷山に衝突し、大西洋に沈んだ豪華客船 タイタニック号の悲劇から由来する。イディオムとして用いられるようになったのは比較的近年で The Washington Postによると1969年に初出と述べている。
こうしたイディオムにはつきものだが、move /throw/ shift the deckchairs on the Titanic などのヴァリエーションがある。
どこかでも述べたが、「筆洗」のコラム氏はかなり英語が好きな人のようである。存じ上げないのでどの位の名人かどうかはわからぬが、英語表現がひょっこりと登場する。
ともかくも最初の一文で私はまんまとコラム子の術中にはまったわけである。奇跡が起きることを祈っている。(UG)