手術中の雰囲気は、ドラマで見るような常に緊迫しているものとは大分違う。


基本的には術者と1-2人の助手で和やかな雰囲気で行われる。


極度に緊張するような状況では、硬直してしまってできることもできなくなってしまうし、


あれ?と疑問に思うようなことが聞かなくて後でトラブルになっては困る。


最近行ったオススメの場所の話、おしいかったものの話、他の先生の噂話など、普通の会話をしながら型通りの手術を進める中で、


「癒着してるね、ここ持って。」


「ペアンちょうだい。」


「これ、尿管だね。」


と、確認事項を自然に言葉に出しながら、お互いの共通認識の中進んでいくのだ。


私たち産婦人科の行う帝王切開は手術の中でも特殊な手術だ。


あんなに大きくお腹を切開し、かなり出血するのに下半身麻酔で意識のある中で行われる。


お母さんに全身麻酔をかけてしまうと、赤ちゃんも寝てしまって、だらんとして生まれてきてしまうからだ。


にも関わらず、いつもの全身麻酔のように看護師さんと会話している上司がいた。


その看護師さんはいつも甘えたようにボディタッチをする人で、先生も満更ではなかった。


赤ちゃんも無事生まれて、あとは20分くらいかけてひたすら縫うだけという状況で、いつものように先生と看護師さんは話をしていて、


「おれの2号さんになってよー。」


と先生が口走った。


『は!?ここ、飲み会の場じゃないですけど。


しかも、患者さん聞こえていると思いますけど。』


助手をしていた私と麻酔科の先生は聞かないふり。


『この2人、最悪、、、』


後にその2人は本当に不倫関係になったようだった。


よくある話だ。


しばらく経ったある時、先生は目の下にあざを作って出勤した。


不倫がバレて奥さんに殴られたとか。


奥さんも医療従事者で、そりゃ情報筒抜けですよ。


ちゃんとわきまえてほしいものです。