◆松嶌明男『ナポレオン。政治と戦争』を読む



※要旨



・20世紀に2度の世界大戦で

100万単位の大量死を生み出した結果を見ても、

国民、国語、国旗、国歌という、

国民国家の根幹を構成する言葉やイメージが

現実を動かした力を侮るべきではない。



・統治上の都合に即し、

折に触れて引用される歴史的な先例や歴史小説、

神話、伝説の登場人物たち、

そしてそれらを表現するための言葉やイメージの集積を、

文化的資本およびその蓄積と呼ぶ。



・大国フランスは、

そのソフトパワーの強力さで知られるが、

その基盤を成す文化的資本の蓄積にも

富んだ国である。



・ナポレオンは、

メディアを政治利用する先駆者の一人であり、

自己演出にも長けていた。



・それゆえナポレオンは、

汎ヨーロッパ的に蓄積された文化的資本のなかから

適切な先例を引用することを

自らの重要な政策の構成要素として

常々意識し、実践していた。



・彼が選んだ偉人は、

いずれも偉大な将軍であり、

広大な領域を制圧した征服者であり、

新しい時代を切り開いた政治家でもあった。

それは、非の打ちどころのないアレクサンドロス大王と

ユリウス・カエサルであった。



・ナポレオン政権での外務大臣タレイランは、

大貴族の名門に長子として生まれた。

足を怪我したため、

父の命令で聖職者にさせられた。

しかし、司教区には赴かず、

パリ社交界やベルサイユの宮廷で

享楽的な日々を華やかに過ごしていた。



・タレイランはその頃から

社交界の寵児であり、頭の回転が速く、

寸鉄人を刺す毒舌の使い手として

フランス宮廷のエスプリを象徴する存在であった。



・タレイランが、

外交交渉で示した高い技量は、

史上最強の外交官としての名声と、

差し出されたらどんなに邪なカネでも

躊躇せずに受け取ったという汚名によって

支えられていた。



・1805年の第三次対仏同盟との戦い、

とくにアウステルリッツの戦勝は、

ナポレオンに最大の栄光をもたらし、

その威名は今なお輝きを失っていない。



★コメント

ヨーロッパの歴史は、

さまざまな形で分析されており、

読み応えがある。