◆加治将一『西郷の貌(かお)、明治政府の偽造史』を読み解く



※要旨




・維新の三傑、西郷隆盛の人気は抜群だ。

鹿児島だけでなく、東北でも莫迦受けだ。




・上野の西郷さんには明確な意図がある。

裏に隠された思惑を読むのは難しくない。


上野の西郷像は、どの確度から見ても大日本帝国の陸軍大将ではない。

ぽんと突き出た丸い腹を見て、軍神や稀代の政治家といったイメージを持つ人はいないだろう。

犬をかわいがる、ほのぼのとした田舎のおじさんといった風情だ。



・もし仮に銅像が勇ましき軍人像なら、その放つオーラが旧武士たちをいたく鼓舞し、

不穏な空気が漂う。

つまり反乱の要となる。

明治政府が、西郷さんの本当の姿をほのぼのとした肖像画へすり替えたのだ。




・西郷の出世の切っ掛けは、第11代薩摩藩主、島津斉彬だ。

大抜擢にあづかるのだが、下級武士の出世のチャンスは、たいがい庭方役という役職にある。

現代風にいえば、社長の個人秘書兼セキュリティーガードだ。


秘書であるからには読み書きは必須だ。

切れ者でなければならない。

広い知識があって、機をみるに敏でなくてはならず、

セキュリティーガード役であるからには腕が立たなくてはならない。


頭はビジネス的で、身体は体育会系が条件だ。




・幕末維新の古文書、手紙、資料を読む場合、気をつけなければならないことがある。

当時を想像し、その懐に飛び込んでみることだ。

周りはスパイだらけだ。

漂う緊張感。


本当のことも書けない。

したがって障りのある記述はすべて暗号になっている。

歴史家は、その暗号に気をつけながら裏を読み解かなければならない。




・俳人、松尾芭蕉は忍者の古里伊賀の男だ。

地方を旅し、多くの俳句を残しているが、異常なまでの速足とこれまた尋常でない見聞域の広さから、

徳川の隠密忍者ではなかったか、という説が昔からある。




※コメント

加治氏の仮説は、歴史好きの人々を魅了する。

興味深い話がボロボロ出てきて、歴史のロマンを感じる。

どんな出来事のも裏表があることを教えてくれる。

自分の固定概念を外し、常に情報をアップデートすることを心がけたい。