◆唐鎌大輔『アフター・メルケル。最強の次にあるもの』を読み解く



★要旨



・メルケル時代の16年間、ドイツはあたかもユーロ圏という「監獄」における「看守」のように振る舞うことが多く、

尊敬というよりも畏怖の対象であることが目立った。



・ドイツは何かにつけて「EUの盟主」と形容されてきたが、

それは大国ゆえに「そうあるべきだ」という思惑が先行した結果にすぎず、

多くの加盟国がドイツの意向に心から賛意を示してきたわけではない。



・英国という初の離脱国を出した今、

アフター・メルケル時代のEUは第二の英国を出すわけにはいかない。



・メルケル時代のドイツは、自分の道理を決して曲げることがなく、

それゆえに周辺国が困惑するということが非常に多かった。



・その理想主義が債務危機や難民危機の最中で顔を出し、

左右両極からのポピュリズムを域内に招来したという批判も根強い。



・米国の初代財務長官であるアレキサンダー・ハミルトンが各州の債務共通化(財政統合)に奔走して今日の米ドルの礎を作ったことにちなんで、

財政統合による合衆国誕生の瞬間を「ハミルトン・モーメント」と呼ぶ。



・共同債券市場の拡(ひろ)がりは域内資本市場に厚みをもたらし、

通貨ユーロの価値安定にもつながる。

そうした仕組み作りの先導役としてドイツ以上の適任はいまい。



・ドイツのメルケル政権下の16年間でEU域内の経済格差は開いた。



・当初、通貨統合で加盟国間の景気循環は収斂が想定されていたが、

その目論見(もくろみ)は失敗に終わった感が強い。



・メルケル政権下でのドイツ経済の強さは「シュレーダーの果実」を

認めつつ冷静に評価されるべきだろう。



・シュレーダー改革、なかでもその本丸に位置するハルツ改革が奏功したことで、

メルケル政権下のドイツ経済が労働コストの面で優位に立ち、

それが「追い風」となったという事実がある。



・債務危機に乗じてドイツは債権者として発言力を増す機会にも恵まれた。



・16年という長期政権を築くに至っては、首相自らの力に限らず、

ある程度は外部環境に恵まれることも必要だったことを感じさせる。



★コメント

ヨーロッパ情勢から目が離せない。

リサーチを続けたい。