◆蔵前勝久『自民党の魔力。権力と執念のキメラ』を読み解く



★要旨



・選挙に強いことが最低条件なり。



・強くなければ自民党に仲間入りできず、

自民党を牛耳ろうと思えば、力をつけなければならない。

そのために党内で切磋琢磨する。



・自民党は戦いに勝って、勝ち続けるために戦う強者たちの集まりである。

「良い悪い」「好き嫌い」は別にして、

自民党は強いのである。



・「自民党とは何か」

この問いに対する私の答えは、

「強者をのみ込むブラックホール」である。



・田舎の地方議員、とりわけ市町村議は地域の代表であり、

「面倒見の良さ」を売りにしている。

そうした議員の大多数は、自民党員であったとしても

無所属議員として活動している。



・自民党の神奈川県議のベテラン秘書は明かす。

「かつては町内会や自治会から、夏祭りや餅つき大会など、

日程の連絡があったが、最近はほとんどなくなった」



・そのベテラン秘書は語る。

「連絡がなくなった今では、自分たちで日程を探るしかない」



・町内会や自治会の行事や冠婚葬祭の日程を調べる専属スタッフを設けている。

「宝の山は、町内会の掲示板」



・自分たちで調べて、呼ばれてもいない夏祭りなどの行事に出向くと、

「なぜ、来るんだ?」

といぶかられるが、それでも行き続けると、

「よく来たなあ」

と歓迎されるようになる。



・民主党系の斎藤は、こう語った。

「震災で思ったのは、自分たちは風だけのイケイケで当選してきたということ。

結局、後援会を作らなかったから、情報を吸い上げる耳がなかった。

これは選挙の時もそうだが、震災という有事のときにも響いた。

国民の声を吸い上げる機能が決定的になかった」



・野間は「与党でないと仕事が出来ない」とは思わない。

新幹線や高速道路のような巨大プロジェクトならば、

与党でなければ難しいが、インフラが一定程度は行き渡った現代ならば、

巨大事業はほとんどない。



・野間の実感として有権者からの陳情で最も多いのは、道路。

それも道路の建設ではなく、壊れた箇所の修繕がほとんど。

河川の修繕をめぐる陳情も多く、

「日常の陳情の8割は、道路と河川のメンテナンスだ」



・陳情を受ける際に心がけているのは、

「ワンストップサービス」。



・地域の道路や河川の陳情をこなすなんて、国会議員のやることか。

国会議員ならば、外交や安全保障、憲法改正、社会保障といった、

大きな課題に取り組むべきではないか、という声も聞く。



・しかし、地域住民の困り事を解決することの積み重ねを無視しては、

選挙で勝てず、外交や安保といった国が直面する課題に取り組むチャンスすら与えられない。

野間を通じて見えてくるのは、そうした現実である。



・立憲民主党の逢坂は「どぶ板」の必要性を何度も強調した。

「どぶ板を徹底させないと、この党は強くならない。

国民に信頼されない。だから地域の課題を、

どんな小さな課題でもいいから具体的なものをこうやって解決をしたんだと。

とにかく、どぶ板に徹することが大事だ」



・ハーバード大学の教授だったイグナティエフは、

故郷カナダの野党・自由党から担ぎ出され、党首となった。

しかし、総選挙で党の議席を半分に減らし、大敗北を喫した。



・イグナティエフは、語る。

「良き政治家は、解説書では学ぶことができないような国に関する知識を身につけるようになる」



「ほとんどの形態の政治的専門知識は、

ローカルな、地元に根差した知識ほど重要ではない」



「地元に根差した知識とは、地元に根差した政治的伝承の詳細な政治的知識、

つまり具体的には、地位のある人や権力ブローカー、市長、

高校のコーチ、警察署長、大企業の雇用主の名前のことであり、

演台ではつねに彼らの名を挙げなければならない」



「偉大な政治家は、ローカルなものに精通していなければならない」



・イグナティエフは、ビル・クリントンの「人たらし」について語る。

ダボス会議の部屋に案内したとき、

「私は、名前と、たんに名前だけでなく、家族の物語全体を覚える、

クリントンの能力に驚嘆した。

その間も彼は握手をしたり、屈んでキスをしたり、

誰かを見つめ返したり、動き回ったりしていた」



・クリントンのような「人たらし」の魅力は、

国会議員であれ、地方議員であれ、日本の自民党議員は、

一定程度は共通して持っている。



・野党の中でも選挙に強い人は、

地元の自民党議員すら困惑させる立憲民主党の安住のように、

「ひとたらし」の力を持っている。



★コメント

選挙に強い政治家というのは、

やはり世界に共通する何かをもっているようだ。

学びたい。


 

 

 

 

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