冬になると一度は耳にした叙情歌ではないでしょうか?

木枯らしとだえて さゆる空より
地上に降りしく 奇(くす)しき光よ
ものみないこえる しじまの中に
きらめき揺れつつ 星座はめぐる

「冬の星座」ー文部省唱歌ー 
      ヘイス作詞・作曲 堀内敬三訳

 40数年前のことです。
 ネパールで、ボランティアとして2年間活動して来ました。
 赴任した歓迎会の席で、活動2年目になる看護師さんが、日焼けした顔で元気に嬉しそうに話してくれました。
 「明日から、初めての長期休暇を貰って、エベレストトレッキングに行って来ます。」と。
 けれど、彼女とは再び会うことはありませんでした。トレッキングの途中で高山病に罹り、3,800mで命を落としてしまったからです。
 歓迎会の後の2~3週間、私は、インドとの国境近くの村に語学研修に行っていましたが、戻ったその日に、彼女はカトマンズの目玉寺院「スワヤンブナート」で、荼毘に付されました。
 1年後、私も彼女と同じコースで、エベレストトレッキングに出掛け、1週間歩き続け氷河の最先端5,400mのエベレストベースキャンプにたどり着きました。高地で空気の薄い苦しさで酸素ボンベを付けました。
 漆黒の夜になって空を見上げると満天の星空が360度広がっていました。空一面に散りばめられた大小の無数の星々は、まるで手が届きそうな近くで光り輝き、今にも降ってきそうでした。
 ボランティアの道半ばで、遠く異郷のヒマラヤの地で逝った彼女が見たかった景色に違いありません。
 宇宙の雄大さを歌った「冬の星座」を聞くと、あの星空と彼女を思い出します。