「メリークリスマス。かんぱーい。」


高円寺店では、毎年恒例というクリスマスの打ち上げが始まった。


場所は高円寺店の客席である。


僕と川根店長、そして遅番のアルバイトが参加した。


川根店長がピザやすしをごちそうしてくれた。


それに店のサラダやデザートを加えると、立派なパーティになった。


僕は朝からほとんどご飯を食べていなかった。


すきっ腹にはビールがよくしみこんだ。


マグロのすしがいつもの10倍おいしく感じられた。


「五十嵐、お前もよくがんばった。売り上げもなんとか

前年を超えることができた。」


川根店長は、酔いのため真っ赤になった顔でほめてくれた。


「ありがとうございます。サンタからのプレゼントのおかげですよ。」


それを聞いていたアルバイトは、冗談だと思い笑った。


しばらくたつと、アルバイトが一人また一人と帰っていった。


明日早番の川根店長も帰ってしまった。


最後は僕が一人だけ店に残った。


時計は深夜の1時過ぎ。


これからが店の事務仕事の片付けだ。


クリスマスが終わると、すぐに正月のキャンペーンが


スタートする。


1日も休みなどないのだ。


すっかり酔いもさめたが、逆に眠気がおそってくる。


朝の7時。


店の電話が鳴った。


「おはよう。スーパーマネージャーの古島だ。」


「おはようございます。」


「五十嵐か。まだがんばっていたのか。徹夜ではないのか。」


「ええ。もうすぐ帰って寝ますよ。」


「そうか、お疲れ様。そうそう、クリスマスの売上げを見たぞ。

高円寺店は前年比でプラスになったな。

他店が苦戦するなかよくがんばった。」


スーパーマネージャーの声は喜びで明るかった。


「ありがとうございます。」


この人にはいつも怒られてばかりだった。


初めてほめられた気がする。


「あと、常務に五十嵐を副店長に昇格してもらえるよう

推薦しておくぞ。」


「えっ?。副店長にですか。」


「なんだ、あまりうれしくないみたいだな。

まあ、疲れていることだし早く帰って休め。」


「はい。」


疲れた体には、大きな仕事をこなした充実感があった。


そして、僕の頭の中にはある考えが浮かんでいた。