今日は、1年に1度の重要な会議。


社長や取締役と社員が本社に集まる日だ。


社員が重役に対して意見をいえる貴重な機会。


午前と午後にわかれ、僕たち平社員は午前の部に参加する。


恵比寿の本社の大会議室は、平社員でぎっしりだ。


会議室は縦に長い。



うしろの方では、マイクを使わなければ前まで


声が届かないほどだ。


まず社長の挨拶。


こんな機会でなければ、社長の顔などめったに


見ることはできない。


相変わらず迫力のある話し方。


社員は皆、気が引き締まっていくのがよくわかる。


最後に、今日は自由に意見を述べて欲しいといった。


そして重役との意見交換にうつる。


「意見がある方は挙手してください。」


一瞬間があき何人かの手があがる。


「私、銀座駅前店の菅野と申します。

入社して1年半がたちます。

皆店舗の人たちはいい人で、毎日仕事が楽しいです。

今後もお客様のために良い店づくりをしていきたいです。」


「パチパチパチ。」


皆拍手をする。


無難な意見だな。


菅野さんという人は前向きでさわやかそうだ。


その後も意見が続く。


どれもビックバーガーの会社を称賛した意見だった。


僕の中に違和感が生じる。


確かに自分の会社の悪口はいわないだろうが、


あまりにも良い意見に偏りすぎではないか。


職場の現状を誰も訴えるものはいないのか。


僕は思いきって、手をあげた。


係からマイクを渡される。


「はい。えー私は高円寺店の五十嵐と申します。」


「ざわざわ。ざわざわ。」


役員たちが少しざわつくのがわかった。