ファーストフード店の社員の休日は週2日ある。
ただし土日はまず休めない。
平日で連続しないように休みをとるのが普通だ。
今日は、高円寺店に来て初めての休日。
社会人になって実感したことは、休日のありがたさだ。
ほとんど毎日休みのような大学時代では想像もつかなかった。
仕事をしないで休めるだけで心がウキウキした。
久しぶりに新宿で大学時代の友人と3人で飲む約束をした。
新宿駅東口での待ち合わせ。
夕方になると駅前には待ち合わせでの人で混雑する。
約束の時間を少しすぎて小久保と岡本がやってきた。
「五十嵐、悪いな。待った?」
「いや、それほどでも。とりあえず居酒屋に入ろっか。」
駅の近くのチェーン店の居酒屋に入った。
それぞれが今やっている仕事の話をした。
仕事の愚痴である。
僕も高円寺店でのアルバイトである金田と鬼塚の話をした。
「ところで五十嵐さ、なんでビックバーガーに就職したんだ?。
水商売というか、サービス業はきついだろ。」
僕らは都内の有名私立大学を卒業した。
小久保は銀行員で、岡本は東京都庁の職員だ。
そのほかの友人も大手の損保や会計事務所などに就職していた。
「やりがいがあるからさ。うちの会社は外資系企業だから
実力があれば出世する。」
「そうかな。ただ就職活動をがんばらなかっただけだろ。」
僕はちょっとムッとした。
「お前たちの組織は年功序列だろ。何歳で課長、何歳で部長。
退職金まで計算できるじゃないか。そんなレールにのった人生楽しいかい?。」
「ああ楽しいさ。銀行員は世間的にもステータスがある。
結婚だっていい話がたくさんあるのさ。
五十嵐みたいな仕事は極論うちの大学でなくてもできるさ。」
「・・・・・・。」
久しぶりの友人との飲み。
本当は楽しくなるはずだったのに。
なんであんなにむきになってしまったんだろう。
有名な高校に入り、有名大学を卒業する。
そして誰でもきけばわかる上場企業に就職する。
僕も小久保や岡本と同じじゃないか。
ひとりで山の手線の電車にのった。
遠くに見える歌舞伎町のあかりが妙に寂しくおもえた。