「ジュワッ。ジュー。」
冷凍のポテトを油のなかに落とす。
香ばしいポテトの香りと油のにおいが広がる。
今日はフライヤーの研修。
フライヤーの仕事はポテトとハンバーガーを作ること。
ポテトは揚げたてをすばやく袋につめる。
ハンバーガーも一度にたくさんつくりすばやくつつむ。
それと同時にオーブンで焼きものをやく。
「五十嵐。フライヤーは秒単位だぞ。
わずかなおくれが命とりだ。」
「はい。わかりました、山井店長。」
僕は店長にいわれたとおりにハンバーガーをつくった。
「五十嵐さん、手際がいいね。」
霜村がほめてくれた。
接客がボロボロだっただけにちょっとうれしい。
「いらっしゃいませー。」
「いらっしゃいませー。」
お客の数がふえてくる。
みるみる列がながくなっていった。
つくっておいたポテトとハンバーガーがどんどんなくなっていく。
これが渋谷のすごさだ。
僕は必死にポテトとハンバーガーをつくった。
なんとか昼のピークタイムをのりこえることができた。
「五十嵐君。やるじゃん。よくフライヤーをまわせたね。」
佐山がほめてくれた。
「そんなことないよ。でもフライヤーは楽しいかも。」
社会人になってはじめて自分を認めてもらえた気がする。
それだけでうれしかった。