ある日、ニューヨークブルックリンのカフェで、ニューヨークのマムダニ市長の奥様がお茶を飲んでいた。マムダニ市長はかねてからイスラエルの政策に批判的で、たびたびそれを公言していた。奥様もイスラエルに批判的な文章をSNSに投稿していた。
その時、若く美しい女性が市長夫人に話しかけ、記念写真を撮りたいといった。市長夫人は快く応じた。
それから女性は、ミスユニバースイスラエル代表だと自己紹介した。彼女はミスイスラエルの活動のかたわら、「反ユダヤ主義との戦い」を熱心にされているそうだ。
ここからは彼女の説明だが、彼女はイスラエルとパレスチナの問題について議論を申し出た。市長夫人は断った。そこで、彼女は改めて記念写真を撮りたいと市長夫人に申し出たが、市長夫人は断り、その場を去った。
そのあと、ミスユニバースイスラエル代表は、イスラエルのテレビや親イスラエルのユーチューブ番組に出演し、事のいきさつを話した。「平和を愛するイスラエル人が対話を求めたのに、冷たく拒絶された」だからやっぱり「ニューヨーク市長夫妻は反ユダヤ主義者なのだ」と。
広いニューヨークで、たまたま市長夫人がカフェに行き、そこにいつもニューヨークにいるわけではないミスユニバースイスラエル代表が偶然に出会う確率は万にひとつもなかろう。事実はもちろん、意図的な作戦だったに違いない。ミスユニバースイスラエル代表の背後の組織がニューヨーク市長夫妻の行動を監視し、夫人がよくいくカフェに向かうと察知した。そこで近くにミスユニバースイスラエル代表を待機させ、市長夫人が店に入るとすぐ彼女も入店し、議論を吹っ掛けた。
でもなぜそんな嫌がらせを時間と金をかけてするのだろう? イスラエルは自分たちがひどく嫌われていることを知っている。なので、自分たちのイメージアップ、並びに自分たちを嫌う存在のイメージダウン工作に熱心だからである。
イメージアップなら
「見てください! イスラエルは戦争犯罪人とか赤ん坊殺しといわれていますが、人道支援活動に非常に熱心です。世界中の災害地で人道支援活動に取り組んでいます」
嫌う存在のイメージダウンなら
「見てください! 私たちは対話を求めていますが、反ユダヤ主義者は拒絶し、私たちに憎しみを向けています。世界中のユダヤ人の皆さん、世界中に反ユダヤ主義があふれています。こぞってイスラエルに移住しましょう!」
という次第。東日本大震災の際もイスラエルは日本に救援隊を派遣し、災害救助をし、日本のテレビ局はそれをなんどか取り上げた。現在、ベネズエラの震災の救援に数多くの国が救援隊を派遣しているが、恩着せがましく大統領官邸にやってきてロドリゲス暫定大統領との面会を求め、握手の写真を公表させているのはイスラエルだけ。救援隊は大統領官邸にいるべきではなく、災害現場で一秒でも多く救援作業をするべきではないのか?
イスラエルの救援隊と握手し感謝の言葉を述べるロドリゲス暫定大統領に対し、批判する向きもあるようだ。実はブルキナファソのイブラヒム・トラオレ大統領も最近イスラエル大使と握手した。ブルキナファソはイスラエルと国交があり、大使館はないが隣国コートジボワールの大使がブルキナファソ大使も兼務しており、コートジボワール駐在大使がやってきた際、トラオレ大統領はイスラエル大使と握手したのである。
「私たちは嫌われていません! ロドリゲス暫定大統領もトラオレ大統領も私たちに握手と対話を求めています。対話を拒絶しているのは反ユダヤ主義者だけです」というメッセージを世界に拡散するのがイスラエルの狙いである。
ところで話は変わるが、この文章をお読みのあなたの周りに粘着質な人はいませんか? いつまでも過去のことを蒸し返し、しつこい。自分は100%正しいと信じているから議論にならない。粘着質な人に意見を言ったり批判したりしたら、暴言をはかれたり、SNSで匿名で山ほど悪口書かれたりと、嫌な思いをする。反面、自分を100%支持する人にはべたべたと付きまとう。まさにイスラエルだ。
前述のマムダニ市長夫人の件もそうだろう。ニューヨークの市長が何を言おうと放っておけばいいではないか。ところがイスラエルは偏執的に付きまとう。カラスは白いと百万回言うしつこさがある。イスラエルを批判するものは皆反ユダヤ主義者なのだと百万回二百万回話し、そうではなくてほとんどの人はイスラエルの政策を批判し、パレスチナ人の権利を擁護しているのだといっても聞かない。
イスラエルという国はどこに向かうのだろう? スパルタと比較する人もいる。軍事的に優れた都市国家スパルタはのちに滅んだ。確かにこの調子だと早晩存亡の危機が訪れると思わずにはいられない。
