「北ホテル」マルセル・カルネ監督、初期の名作。 | B級おもしろ映画館

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「北ホテル」    1938年   92分  モノクロ・スタンダード

 監督・脚本・マルセル・カルネ

 出演・アナベラ、ルイ・ジューヴェ、アルレッティ、

     ジャン・ピエール・オーエン

 

パリ。北停車場からほど遠からぬところ、

サン・マルタン運河にそった石畳の町。

運河には閘門があり、また山形に高くかけた橋がある。

運河にそって細長い小公園もある。自動車もほとんど通らない。

パリの市中とも思えないほど静かなこの界隈に北ホテルがある。

ホテルのお客は小市民諸君である。

その晩、北ホテルの食堂はにぎやかであった。

小公園の番人マルタヴェルヌの娘リュセットがその日

初聖体を受けたので、そのお祝いのささやかな宴会である。

そこへ若い男女が一夜の宿を乞うた。

女中ジャンヌが二階の一室へ案内する。

若いピエールとルネは思いあまって心中を企てたのである・・・。

                              (KINEMA より抜粋)

「霧の波止場」と並ぶ、マルセル・カルネ初期の名作の一つ。

ピエールはルネを撃つが、自分を撃つ事が出来ず茫然となる。

そこへ向かいの部屋の住人が入って来て「逃げろ」と言う。

男は部屋を飛び出し、拳銃も捨て、列車に飛び込んで死のうとするが

それも出来ずに警察に自首する。女は幸い軽傷で済み退院して

北ホテルにやって来る。行く当てのない女に、ホテルの女主人は

ここで働かないかと持ち掛ける。女は喜んで働く事にする。

心中しかけた男と女、脛に傷持つやくざな男を中心に

北ホテルに集うパリの名も無き男と女の日々の日常が描かれる。

 

オープニングのシーン、流れる様なカメラワークが素晴らしい。

運河にかかった歩行者用の高い鉄橋を画面の左側において

北ホテルの前の歩道、小公園の様な遊歩道をとらえたカメラは

そこで全景を映し出す。その遊歩道の様なベンチに

若い二人が座っている。ここまで僅かなショットの積み重ねだが

フランス映画特有の粋な演出には溜息が出る素晴らしさ。

ルネ・クレール監督の「巴里祭」もそうだが

町の何気ない日常を見事に描き出すこの頃のフランス映画は

本当に素晴らしいとしか言いようがない。

 

色々あっても結局若い二人は、もう一度やり直そうとする

ラストまで、フランス映画の粋が全編に詰まった名作です。

ラストシーンはオープニングとは逆のカメラが

北ホテルから運河、鉄橋と映し出す。この辺りの雰囲気描写は

フランス映画の真骨頂でしょう。

 

「霧の波止場」ほどの厳しさの無い、少し甘いメロドラマだが

出演者の素晴らしさと共に忘れられない作品の一つです。

マルセル・カルネ監督が世界映画史上の最高傑作「天井桟敷の人々」を世に送り出すまで、この映画の後7年後でした。

 

昨日グッスリ睡眠をとったせいか、

今日は疲れもとれスッキリしています。

サッカーもポワロも見ないでフランス映画を見ていました。

80年以上前の作品ですが古さは感じられません。

人間そのものは何年たとうが、そんなに変わるものではないようです。

 

今日はチャト君の爪切りで猫の病院に・・・・・・・・。

病院の扉に正月休みが張り出されている。

もうそんな季節なのかと、やっと実感できました。

 

この映画の7年後でした。