「賭博師ボブ」 1955年 98分 モノクロ・スタンダード
監督・脚本・ジャン・ピエール・メルヴィル、撮影・アンリ・ドカエ
出演・ロシェ・デュシェーヌ、イザベル・コーレイ
夜になるとモンマルトル界隈の賭博場に出入りする
ボブ(ロジェ・デュシェーヌ)には、
息子のように可愛がっているポロ(ダニエル・コーシー)という
若者がおり、彼は恋人のアンヌ(イザベル・コーレイ)と、
ボブの部屋で会ったりしていた。
ある時ボブは、ドーヴィルのカジノの金庫強盗を計画するが、
ボブの元仲間で親しい間柄の警視(ギイ・ドコンブル)が
それをかぎつけており、
決行の当夜、ルーレットの勝負がツキにツキ、
ボブが所定の位置に姿を現わす前に、
仲間たちと警官隊とが撃ちあいになってしまう。
ボブが駆けつけた時、ポロはすでに撃たれ、
ボブの腕の中で息をひきとった。
そして警視に連行されるボブのもとに、
カジノから手にしたことのないような大金が届くのだった・・・・・・・・・。
(KINEMAより抜粋)
ストーリーは、ほぼ上記の通りだが
フィルム・ノワールとしてのスタイリッシュな映像が凄い。
オープニングの朝のシーン。
まだ夜が明けきらない僅かな時間。
フランスの監督はこの時の描写がたまらなく上手い。
ルネ・クレールもこの時間の描写が上手過ぎる。
モンマルトルの朝、バクチもツキがなく一人家路につくボブ。
若い娘がうろついているのを苦々しく眺めたりしている。
この朝のシーン、アンリ・ドカエのカメラが良い!
旧知の警察署長に声をかけられ、送ってもらう。
昔は暗黒街の数々の事件に関わったボブも
ここ20年間は殆ど事件には関わっていない。
独り住まいの侘しさがにじみでるような家の中。
仲間が金の無心に来るが、理由が気に入らないと断る。
人情味豊かな初老の男だが、男としての美学は貫き通すカッコ良さ!
そんな彼が、カジノの売上金強奪の計画を立てる。
これが最後の仕事と覚悟しての大バクチ。
所が、女の口から洩れてしまい、裏切りや密告で
警察の知る事となる。当日カジノに出向きバクチに興じるボブ。
あれ程ツキが無かった男がツキにツキまくる。
信じられない大金が懐に入る事になる。
カジノ襲撃の時間も忘れているボブだが
仲間たちは予定通り襲撃しようとするが、待ち構えていた警官隊に
銃撃戦の末撃ち殺される。
ボブの腕の中で息を引き取るボロ。
ボブ自身は襲撃そのものには関わっていないが逮捕される。
その時、ボブの車のトランクに見た事も無い大金が運び込まれる。
警察署長は、金はかかるが良い弁護士を付ければ
多分無罪になるだろうと呟く・・・・・・・・・・。
この映画を見て、非常に徹した描き方に圧倒された
スタンリー・キューブリック監督は、以後犯罪映画を撮るのをやめた
という逸話を残している。
裏切りと密告など、暗黒街の冷たい掟と戦う男たちの姿が
アンリ・ドカエの乾いた映像の中に浮かび上がる。
メルヴィル初期の傑作だと思う。
若い女にほのかな恋心を抱くが、息子のようにかわいがっている男に
譲ってしまう。男は何処までもニヒルな姿勢を崩さない。
そのスタイルが、多くの映画人に愛された。
監督自らが美術も担当し、クールな映像美を生み出している。
大好きなメルヴィル監督の傑作の一つです。
今日の暑さは異常でした。
最高気温24・5度。昨日より10度近く気温が上昇した。
この寒暖差は、いくらなんでも年寄りにはきつかった。