「眼の壁」 1958年 95分 モノクロ
監督・大庭秀雄、脚本・高岩肇
出演・佐田啓二、鳳八千代、朝丘雪路
衛星劇場などのチャンネルで、松本清張特集を放送している。
その内の一つを見てみた。
いつもの松竹マークの後、大きく(松竹グランドスコープ)のタイトル。
シネマスコープが主流になりつつあった時代でした。
奥湯河原の山中で、昭和電業の会計課長・関野が縊死していた。--関野の部下・会計課次長の萩崎竜雄は、
残された遺書から、関野の自殺が給料支払のための金融工作で
パクリ屋一味の詐欺にかかって
手形を奪われた責任をとったのだと知った・・・・・・・。
萩崎役は佐田啓二。事件の真相を知りたくて会社を休んで
一人で調べ出そうとする。
協力者は新聞社に勤める友人だけ。
この時代、手形のパクリ屋が横行していた。
映画ではあまり詳しく説明されないが、原作では詳細な説明がある。
事件は黒幕にいる政治家の暗躍や
謎の女の登場となって、第2、第3の事件が起こる。
佐田啓二が調べて行くと事件の関係者が
中央線で瑞浪の方に向かった事が分かる。
そこで彼は中央線の沿線を調べて行く。
高蔵寺、多治見、土岐津、瑞浪と
当時は蒸気機関車が現役で活躍する沿線が次々に出てくる。
多治見の駅からのシーンは、ビルもなく平屋の家が続く
ひなびた田舎の駅前だった。現在は土岐と変わった駅の名前が
土岐津と昔の呼び名も懐かしい。土岐川も陶器の街らしい風景も
ワンショットながら映し出されている。
映画の内容よりもこの5分足らずのシーンが印象に残る。
ラストは精神病院での活劇がある。
ここで悪の親分が、硫酸の入ったプールに飛び込むという
凄惨なシーンがある。
松本清張さんの小説には、貧しいが故の悲惨な生活からの
差別などが多く描かれている。この原作も、一つ間違えば
差別という大騒動になりかねない事も描かれている。
モノクロのキリっと締まった画面に、当時の貧しさからの犯罪が
描かれている。95分と言う決められた時間内にきちっとまとめた
大庭監督、上手いものです。
今日は雨が降ったり、晴れたりの忙しい天気。
明日からは台風の影響で大雨の可能性もある。
何処へも出かけず、大人しくしています。