「大誘拐」 1991年 119分
監督・脚本・岡本喜八、音楽・佐藤勝、美術・西岡善信
出演・北林谷栄、緒形拳、風間トオル、樹木希林、天本英世
久し振りに邦画を見た。
「独立愚連隊」シリーズを見ようと思っていたが
妻に「またモノクロの古い映画を見ている」と言われそうだったので
カラー作品であまり何度も見ていない作品を選んだ。
ある夏の日の朝、大阪刑務所に仲間の正義と平太を迎えに行った
健次は、二人に誘拐の計画を話す。
最初は反対する二人だったが、健次のねらいは
紀州一の山林王・柳川とし子刀自。さっそく計画を実行する三人。
ところがこのおばあちゃんただ者ではなく、
やっと山中で拉致に成功した彼らに向かって
和歌山県警本部長・井狩の知るところとなれば逃げるのは難しい、と落ち着いた表情で論じ始める始末。
こうして三人は刀自に用意させた家に身を隠すことになる。
この家は柳川家の元女中頭だったくーちゃんことくらの家だった。
そのころ、和歌山県警本部では“刀自誘拐”の連絡が届き、
刀自を生涯最大の恩人と敬愛する井狩が火の玉のような勢いで
捜査に乗り出して来た。
連絡を聞いた刀自の子供たちも次々と柳川家に到着。
騒然とした空気の中、刀自救出作戦が開始された。
一方、三人は隠れ家で身代金要求の策を練っており、
その額が五千万円だと知った刀自はいきなり表情を変え、
「大柳川家の当主なんだから百億や!」と三人に言い放つ。
それによって誘拐犯と刀自の立場は完全に逆転してしまい、
事件はいつしか刀自と井狩との知力を尽くした戦いになっていた。
そしてついに身代金の受け渡しの日がやってくる。
それは前代未聞の全世界へ生中継されるにまで至っていた。
こうした大騒ぎの中で百億は犯人に渡され、事件は終わった。
誘拐犯の三人はそれぞれの道を歩み始める。
事件が落ち着いた時、井狩は刀自の元を訪ねこう切り出した。
「あの三人、どこで見つけてきたの?」
刀自は静かに事件の全貌を語りだす・・・・。(KINEMAより抜粋)
天藤真の同名小説をそのまま映画化した作品。
この原作が大好きな私は映画化が発表されるまで
いつもの様にキャスティングで遊んでいた。
主人公の刀自は、岡本監督と同じ北林谷栄さんだと思う。
少し前ならこれはもう三益愛子さんがはまり役だと思う。
今ならと云うか、もう少し年をとったら藤山直美さんでしょうか?
元・女中頭の樹木希林さんは、もうピッタリの選考です。
天本英世さんの様な喜八組のメンバーもキャスティングされていて
俳優さんを見ているだけで楽しくなる。
音楽の佐藤勝さん、美術は西岡善信さんと
あの頃の最高のスタッフも揃っていた。
原作が好きで、映画のイメージが頭の中で完全に出来上がって
しまっていた私には、映画の出来には多少の不満もあった。
身代金100億円!と云う金額が破天荒すぎる。
原作ではこの金額が理不尽でもなく、刀自の中でキチンと計算された
ものである事は細かく説明されている。
2時間という制約の中での映画の場合、ここまで映像化するのは
やはり無理な注文だった。
もう一つの不満は、誘拐というサスペンスの中にユーモアがたっぷりと
まぶされていて、上手く中和剤のようになっている。
誘拐された本人が、事件の主導権を握り、
全てを支配して事件の推移を手中に収めているという
前代未聞の出来事は、普通の描き方では何処かに無理が出てくる。
それを多少緩和させるのが、刀自の持つ人間性とユーモアだと思う。
映画は80パーセントは成功していると思う。
北林谷栄さんと、緒形拳さん、それに樹木希林さん
この三人の余裕たっぷりの演技力が、
このトンデモナイ物語にリアルさを感じさせてくれた。
何度見ても面白い映画です。映画の後は原作もお薦めです。
楽しさが倍増します!
暑いです。多治見の夏がやって来ました。
35・0度。町なかの温度計は37度を超えていました。
これが二か月続くかと思うと、ウンザリします。
エアコン、フル稼働です。