「愛のお荷物」 1955年 110分
監督・川島雄三、脚本・柳沢類寿&川島雄三、音楽・黛敏郎
出演・山村聰、轟夕起子、三橋達也、北原三枝、小沢昭一
山田五十鈴、フランキー堺
物語は、戦後10年が経ち経済的に豊かになりつつあった日本で
もう一つの問題が、増え続ける人口でした。この時8900万人。
時の政府は人口に歯止めをかけようと躍起になり
厚生大臣が先頭に立ち、数々の政策を実行しようとしていた。
厚生大臣が人口問題の解決策について、国会で演説を行っている
まさにその時、厚生大臣の48歳の妻は産婦人科の医師から
妊娠している事を告げられていた。
タイトルのお荷物とは赤ちゃんの事で、厚生大臣の妻の妊娠で
大騒動が勃発する中、このうちに関係する女性たちの殆どが
身ごもってしまうという事態になり、テンヤワンヤの状態に発展する。
柳沢類寿&川島雄三の共同脚本は、
この騒動を溢れるセリフの応酬の中にテンポよく描いている。
川島雄三はこれが日活移籍後の最初の監督作品。
日活入社・最初の出演作の三橋達也始め、
フランキー堺、小沢昭一など気の合った俳優、
山村聰(大臣役)、轟夕起子(大臣夫人)、山田五十鈴などの名優達。
映像はモノクロだが、これだけ豪華な出演陣に囲まれて
川島雄三・監督、珍しく大張り切りで最高に愉快な作品となった。
お粗末すぎる大臣室の様子など、今の時代と比べると
大笑いしたくなるお粗末さに、ホンマカイナと思ってしまう。
戦後10年、日本はこんな物だったのでしょう。
それにしてもこの頃の映画、やたらと煙草を喫っている。
国会の審議の場でも、堂々と喫っている姿をうつしている。
この作品以後、「洲崎パラダイス・赤信号」「幕末太陽伝」と
日活時代の傑作を撮る川島雄三・監督だが
今見ても古さを感じさせない面白さに溢れたこの作品も
間違いなく傑作の一つでしょう。
今もそうですが、政府が人口問題に訳の分からない口を挟むと
碌な結果が出てこないと言う、証拠のような映画です。
廉価版のDVDも出ています。是非見て欲しい映画です。
今年も遂に後一日。
早過ぎて考えている間もなく、時間だけが過ぎてしまう。
一日一日、取り返しのつかない何かを失っているようで
怖くもあるが、それだから呑気に生きてゆく事が出来ていると
諦めて行くしかないようです。