「仁義」男を貫くメルビル監督 | B級おもしろ映画館

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「仁義」   1970年  140分

  監督・ジャン・ピエール・メルビル、撮影・アンリ・ドカエ

  出演・アラン・ドロン、イヴ・モンタン、ブールヴィル

      ジャン・マリア・ボロンテ

 

男の映画です。女性は一人も出てこない。

トレンチ・コートにソフト帽。煙草の煙が闇にゆらめき

これぞ男の美学!フィルム・ノワールの極致。

ここまで徹して描いてくれると、映画の出来なぞどうでも良くなる。

出所を明日に控えたドロンの元へ、刑務所長が仕事を持ちかける。

高級宝飾店の襲撃という荒っぽい闇のお仕事。

OKしたドロンさん。髭を生やしいつもと違うスタイル。

出所後、マルセイユの古い仲間を脅して、金を巻き上げ

中古車を買ってパリへ向かう。レストランで食事中に

護送される列車から脱走したジャン・マリア・ボロンテが

ドロンの車のトランクに紛れ込む。

ドロンを追っかけてきた二人を殺して、いよいよパリへ。

元・刑事で射撃の名手のイヴ・モンタンも仲間に加わり

宝飾店を襲撃、成功する。あまりにも大きく報道されたり

盗んだ宝石が量も多く、高価過ぎた事もあって古物商が尻込みする。

警察のブールビルの捜査の手が伸び、策略に引っ掛かり

全員射殺される。これだけの物語だが名手アンリ・ドカエの

くすんだカメラが素晴らしく、冬のパリの冷たさと

一片のぬくもりもないメルビルのタッチが、より冷酷さを増している。

途中、仕事は最後までやり遂げるが金は要らないと言う

イヴ・モンタンが良い。精神を病み、この仕事に人間としての誇りを

賭けた男の潔さが滲み出る。

この映画、最初に見たのは京都スカラ座。

正月映画として公開されたが140分の映写時間が長すぎると

モンタンが苦しむ場面などがカットされ、

話のつじつまが合っていなくて、あれ?と思った。

その後ソフト化される時は、カット場面が復元された。

今のDVDも140分版で発売されている。

ストーリーがもたつく所もあって、評判は良くなかった。

この次の「リスボン特急」も、同様の評価だった。

私には二作とも忘れられない作品です。

フィルムから冷たさが伝わる様な空気感が堪らなく好きです。

こんなタッチの監督はメルビルしかいません。

「男の美学」を描いた監督は何人かはいましたが

正真正銘の男を貫き通したのは、メルビル一人です。

映画を見終わり、煙草に火をつけたくなる映画でもある。

 

名古屋の大須商店街の中に、ミニ・シアターがオープンした。

一時期、商店街の近くに住んでいた事があり

その頃は、洋画三本立ての三番館が健在だった。

以後、何十年もの間、映画館はなかった。

今はブルー・レイのみの上映だそうだが

キャパ42のミニ劇場、頑張って欲しい。

今度大須に寄った際は覗いて見たいと思っている。