何のことかといいますと、以前に jwstudy.com の 大学教育の記事 を書くために調べていた時なんですが、2008年の巡回訪問で高等教育に関してかなり消極的な指針を長老たちに提示されたという情報がありまして、それについて当時確認をとっていたときに、どうしても正式な文面がはっきりしないという困った状況がありました。
というのは高等教育に厳しい言葉が出ていたということまではわかったのですが、人によって印象がかなり違うという結果だったんです。その時、巡回監督の扱う筋書きに混乱を起こさせる何かがあるとは思ったのですが、いくら探してもその筋書きが見つかりませんでした。そして先日ひさしぶりに調査していたら、見つけました。巡回監督の筋書き。スペイン語の筋書きがリークして英語に訳されたものだったんですが、それを日本語にしたので、ニュアンスは多少変わってしまっているかもしれません。しかし新世界訳聖書の重訳と同じくらい正確だとは思いますので、ここに公開します。
この筋書きを見て、混乱の理由がわかりました。この集まりは巡回監督が、短い質問をなげかけ、それを出席者に答えさせるという形で進められるんですが、この筋書きがいじわるというか、困惑と混乱をまき散らすような仕組みになってるんですね。その点も含めて自分なりの解説を青文字で入れながら説明します。黒文字は筋書きのままです。筋書きのうちの高等教育にかかわるところだけ引用しています。
世俗の教育に関する健全な言葉(15分)
教育の目的は人がエホバを讃美することができるようにするため(塔96 2/1 p.14 23節)
宗教的な視点では間違いではないでしょうが、単純すぎです。
教育についてわたしたちが考えている事柄は、ご自分の僕たちを養われるという神の約束に対する信仰がどれほどあるかを明らかにする。(マタ 6:33; コロ 3:23,24)
?? ベテルで暮らしているとそう感じるのかな。”神の約束”って言葉を気軽に使ったら失礼だと思います。ベテルの人は信者の寄付で養われているのです。そこのところ勘違いはよくないです。
個人や家族の必要の世話は二次的な目的(テモ一 6:6-8; 塔96 2/1 p.14 22節)
二次的な目的って… 家族の世話を二の次にすると人間としてどうなんだって聖書の言葉にあったように思うんですが。
良い判断をするために、高等教育の代償を予測するべき(ルカ 14:28-30)
質問:高等教育にはどのような代償が伴いますか?
[金銭的代償、サタンの体制で目立つことの願うようになる、道徳にかかわる風潮、真理を捨て去る人々、など(塔05 10/1 p.28,29 9-13節)]
これです。単純な質問形式。ない答えも無理やり出せってことですね。出席者が多ければ、きっと無理な答えがいっぱい出るんでしょうね。
親は自分の子供たちに実際的な方法で助けを与え、彼らに幸福と永続する将来を提供できる教育を選択できるようにするべき。
お! 幸福と永続する将来って いい言葉が出てきました。どんな勧めが出るのか…
会衆の活動に注意を向けさせることは幸福を生み出す。(使徒 20:35)
以外と単純な答えでした…
イエスの最初の弟子たちは前途有望な職業を捨てた。(マタ 4:18-22; 9:9; コロ 4:14)
飛躍しすぎてませんか?
彼らはそれを損失とみなさなかった。(マタ 19:29)
結局言いたいことは、有望な職業なんて捨てても後悔しませんということですね。
自分や、妻、子どもたちが高等教育を追い求めるようになった場合、兄弟は会衆での特権を保持する資格を満たし続けることができますか?[テモテ第一3:13及びテトス1:9からの短いコメントを求める]
ここで聖句を開いて、出席者に答えさせます。困惑する長老たち。聖句を読んでさらに困惑する長老たち。テモテ第一3:13とテトス1:9から答えなんて出ません。巡回監督の意見を聞くしかありません。心が整いました。
ここから二つの状況を説明して、質問が行われます。この説明や質問がなんともいじわるな感じで、特定の結論に導こうとしている意図を感じます。その結論とは「資格を取るための勉強はOK。専門学校的なものは印象いいけど”大学”はなぜか印象が悪い。教育を勧めるような言葉を長老や奉仕の僕は語るべからず。」です。
状況:長老の息子が建築の仕事のために勉強しており、両親と共に生活しています。息子は奉仕の僕です。彼は勉強を組織して集会や宣教の妨げにならないようにしており、時折補助開拓も行います。そしてその家族はこの種の教育を得ることを他の人に推奨するようなことはしていません。
質問:彼とその家族の生き方を考えると、この長老は王国を第一に置くように家族を教えていると言えますか?(マタ 6:33)
[もし兄弟、あるいは家族の成員が特定の仕事を得るために高等教育を追い求めており、それを推奨するわけではなく、彼とその家族の両方が王国を第一に求めていることが明らかであれば、その奉仕の特権は影響をうけないでしょう。
幾つかの職業は職業免許を失わないための定期的な個人的資格講習が求められています。]
状況:長老の娘が家から離れた大学で勉強しており、たくさんのお金を得ることを目標にしています。長老とその妻は他の兄弟たちに尋ねられると、自分たちの娘が経済的に良い状況になることを考えており、彼女や家族が将来有利な立場を得るかもしれないことを人に話しています。
質問:この家族は言葉と行いにより、忠実な奴隷が高等教育について語ってきた事柄に対してどのような意見を持っていることを示していますか?(詩 1:2,3; コリ一 2:13-16; ヨハ三 9)
[任命された僕が経済的な利得や名声のために高等教育を推奨するなら、会衆内で仕える資格に疑問が生じるでしょう。そして彼と仲間の長老たちは、はばかりなく語ることはできなくなるでしょう。]
感想:
考え方があまりに単純。
「大学で勉強しており、たくさんのお金を得ることを目標にしています」というシチュエーションが描かれていますが、大学は”たくさんのお金を得るため”に行く場所という印象を与えることに固執しています。それに対して「建築の仕事のために勉強」することは別の次元として語られています。
普通に考えたら、建設の仕事のための勉強だって、四年生大学での勉強だって最終的には”お金を得る”ための仕事に繋がるのであり、自分や家族を養うということに繋がるんじゃないでしょうかね。
上記の討議は、たった15分間ですが、話に加わった人の頭の中には幾つものクエスチョンマークが出てきて消化不良になったのではないかと思います。
気の毒です。というか子供がかわいそう。
『特定の仕事を得るために』勉強するのはおとがめなしのようですが、18歳で『特定の仕事』を限定しろというのに無理があります。考えてみたらずいぶん無責任な指針だと思います。
あと問題なのは、人の将来を左右するような問題を、その人生に関係のない人たちが、あいまいな言葉で語り合っていることですね。
でも、さすがにここで扱われたあいまいな指針で、いろいろ不満が出たのか2012年3月6日の長老たちへの手紙の中では以下のような指針が加えられました。
2012年3月6日 長老たちへの手紙
それゆえ長老団はその兄弟がもはや奉仕をする資格がないと判断するかもしれません。しかしながら、ほとんどの場合、そのような決定は巡回監督の訪問と関連して行われるべきでしょう。もしその[削除される]兄弟が決定に同意していないようであれば、書面でその理由を表すことを勧めることができます。そしてその書面は巡回監督の報告と共に送付されるべきです。
The body of elders may therefore determine that the brother no longer qualifies to serve. In most cases, however, such a determination should be made in conjunction with the visit of the circuit overseer. If the brother does not agree with the decision, he may be invited to express his reasons in writing, and this should be sent along with the circuit overseer’s report.
子供を大学に行かせたということで特権削除されたら不服の手紙を書くのもいいですし、この機会に子供の将来を考えて、特権なんてどうでもいいと思うのもいいですし、とにかく自分の特権のために子供たちの将来を振り回すようなことだけはないように願います。