忘れられたころに更新するこのブログ、今回の話題は「オーケストラのライブラリアンの試験を受けてきました~」です。

 

さて、前回のブログで友人たちから「夢を追え」と叱咤激励を受けたくだりを書きました。ま、夢なのかどうかは別にして、今の仕事が納得いかないのなら、転職を勧められました。

 

わたし、背景が背景だけに、何がしたいとか、この世の中で何を成し遂げようなんていう気持ちが皆無なまま大人になり、中年になっております。(心は少年のままのつもりですが😀) ただ、音楽だけは昔から大好きで、なんとか音楽に関わる仕事をしたいと思っていました。残念ながら音楽の専門教育は受けておらず、なかなか厳しいなとは感じていました。その中で、楽器演奏が必ずしも必要なく(異論はあるとは思いますが)、自分の几帳面な性格に合っていると思ったのがライブラリアンの仕事です。NHK交響楽団の沖あかねさんの記事を読んだりして、その気持ちは更に強まりました。

 

しかしライブラリアンの募集は実に少ない。(そもそも絶対数が少ないですからね。)それだけでは転職対象として心もとないので、オーケストラの事務局の求人も含めて活動しました。結果、6ヶ所の求人に応募しました。そのうち2件がライブラリアンです。1件は履歴書と職務経歴書の送付のみ、もう1件は試験がありました。

 

前置きが長くなりましたが、今回の記事はこの試験体験記となります。なにしろ、試験を受けると言っても、通常の受験や就職のための試験対策のように「過去問」とか先輩の体験記などというのは皆無です。(言葉だけでなくホントに皆無”0”です!)

なので、拙記事がこれからライブラリアン試験を受験しようと思っている方の助けになれば嬉しい限りです。(非常にニッチなニーズでしょうが(笑))

 

さて、受験案内をみると、1次試験ではSPI3(基礎能力検査(言語・非言語)、性格検査)と専門試験(ライブラリアンとして必要な専門知識、能力等について、筆記試
験を行います。出題範囲は「音楽史、楽譜に関する知識、ライブラリアンとして
の実務に関する知識」です。)となっていました。SPIの方は一般的なものなので割愛します。適語選択や高校生レヴェルの数学の問題でしたね。

 

で、専門試験の内容に入る前に、受験者について簡潔に記します。1名の枠に対して計12名(男性3名・女性9名)の方が試験を受けに来ていました。意外と?新卒や20代と見受けられる方は3人ほどと少なく、あとは40代以上が6,7名(わたしも含めて😊)、30代が残り2,3名という感じです。あくまで見た目だけなので、実際の年齢は分かりませんけどね。

 

わたしの受験準備としては、音楽史は一通り本を読んだりして西洋音楽と日本音楽の歴史を振り返っていました。楽譜に関する知識ということで、高校レヴェル以上の内容(音大の受験対策本を使って勉強しました)を学習しました。音程やら調判定等も含めて頑張って勉強しました。その為にキーボードを購入し、音を鳴らしながら、三和音や属七の和音等も、感覚を掴もうと頑張りました。ライブラリアンの実務といってもねえ、沖さんの記事やYouTubeのインタビュー動画を観たりして知識を得るしかない。

 

さて当日、午後1時からの専門試験、問題用紙を開けると絶句しました。部屋全体にウッという空気が流れたのを感じたのはわたしだけでは無いはず。問題用紙は解答用紙もろとも回収されちゃったので、微かな記憶で書きます。

 

問1は、モーツァルトの交響曲第31番「パリ」、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」、ベルリオーズの幻想交響曲、マーラーの交響曲第2番「復活」、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、武満徹の「ノベンバーステップス」の各曲について、作曲家の生没年・楽曲の完成時期・編成上の特徴(特殊楽器の使用の有無等)・音楽史上の位置づけについて記述せよという問題でした。モーツァルトやベートーヴェンくらいは生没年を覚えているけどねえ。マーラーも知っていましたが、ベルリオーズはベートーヴェンとそこそこ被っているとかドビュッシーは1910年代の没だったなとか、武満徹は1990年頃に亡くなったんだったっけという程度の記憶。楽曲の特徴も、多少は分かるけど詳細に書けるほどでは。ノベンバーステップスは琵琶と尺八を使っているのも知っていたし、ニューヨークフィルからの委嘱作品だという知識もありましたね。この辺のことを書き連ねました。ベルリオーズの幻想交響曲は聴くことはあっても、特段、好きな曲では無いし、パリに至っては…

 

ま、そんな感じで書くだけ書いて次の問2.(以下、引用する楽譜はこんな感じというのをネット検索で拾ったので、実際の問題とは全く違うことをお断りしておきます。そしてこういう形での使用をご容赦願いたいと思います。)

(1)次の楽譜の「あ」~「す」まで、使用楽器を記せ、移調楽器についてはその調性も書くこと、という問題でした。オーケストラの楽譜にはルールがあって、基本的に上から高音楽器であり、木管・金管・打楽器・弦楽器の順となっています。この場合は、「あ」がフルートという感じです。クラリネットは移調楽器なので、調性がちがう「お」ですね。曲自体の調と楽譜の調から何度違うかを確認して楽器の調性を決定するという流れ。(わたしの勉強のレヴェルではこんな感じ。専門家はもっとスマートに判定するのでしょう。)そして問2の(2)は、この曲の作曲家と曲名を記せというものでした。1ページのスコアだけで曲名を判定するのはかなり困難でしたねえ。

問3が未だに何を訊かれていて何を答えたら良かったのか分かっていないんですが、同じようにスコアを出されて(こっちは楽器も記入してありました)、この部分の最大の編成は?という問い(だった気がします。)要は、fl2/pic みたいな楽譜になっていたので、フルート奏者が2人必要で、そのうち1人はピッコロ持ち替えということで、合計で何人要るのか?という問いだと思い、人数を数えて書いたんですが、解答欄が大きくてそれだけでは足りない気がしている。問3は3種類のスコアがありました。(1)から(3)まででした。

 

この辺で結構お腹いっぱいなのですが、問4はスコアの目次?の部分がコピーされていました。

これもネットで適当な楽譜を拾ったのですが、こんな感じのものが印刷されていて、この曲の編成を記せというのが問題。問3と問4の違いがよく判っていなくて、ま、問3は「この部分の」編成で、問4は曲全体の編成ということなのでしょう。拾ったこれは実に分かりやすく書いてくれていますが、実際の問題は、打楽器が略称で書かれていて「SD」となっていたりしました。スネアドラムじゃないかと思って書きましたが未だに正解は不明です。

 

最後の問5、なかなか適当な画像が見つからなかったのですが、シューベルトの交響曲第8(9)番ハ長調「ザ・グレート」、ムソルグスキー作曲ラヴェル編曲「展覧会の絵」、ドヴォルザークのスラヴ舞曲集第1集4~7番の3曲の楽譜の扉?が印刷してあって、ここに書かれている内容を記せというものでした。作曲者名・曲名は常識として、楽譜の編集者の名前(出版社含めて)、楽器の編成やちょっとした説明文(シューベルトの場合、過去には第9番として知られていたが今は8番になっていること、ムソルグスキー作曲の「展覧会の絵」は元ピアノ曲で、ラヴェルの編曲版が一番ポピュラーであること、各曲のタイトル等、そして全曲共通して、調性だったり表情記号や分単位での演奏時間)でした。これはわたしにとっては一番書きやすかった問題かもね。とにかく書いてあることを全部訳して、書き連ねました。最後のドヴォルザークに突入した頃に、あと5分です!のコールが。とにかく時間いっぱいまで書きましたね。

 

なんとか終わりました。時間が来て問題用紙と解答用紙が回収されていきました。ななめ前に座っていた女性の解答用紙がチラッと見えました。どのページ(多分最後のページだったような)かは分かりませんが「白紙」でした。時間が足りなかったのか書けなかったのか。曲がりなりにも全部埋めたわたしとしては、ちょっとだけ安心?しました。

 

終わると放心状態でしたね。ま、力いっぱい頑張りましたよ。

 

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ということで一昨日、仕事から帰宅すると、ポストに簡易書留の不在連絡票が入っていました。わざわざ不合格通知を簡易書留で送るかなあというのと、いやいや、個人情報?だし送るかという気持ちで待ちました。昨日の夜、再配達されてきました。届いた封筒は薄い! どうみても紙1枚しか入っていない。(あ、そうそう、1次試験合格者には2次試験の案内が入っているとアナウンスされていました。)絶望的な気持ちで開くと、たった2行「あなたは、令和5年度○○交響楽団 楽団職ライブラリアン採用試験第1次試験において判定の結果、不合格となりましたので通知します。」とだけ書かれていました。就職試験・面接などの不採用通知だと「今後のご活躍を祈念いたします。」とか「形だけでも」労いがありますが、あまりの「あっさり感」に、かえってこれで吹っ切れました。オケ関連の転職はこれで全敗、ま、別のことで頑張ります!