きちんとした格好の上品な婦人たちがグループをなして家々を訪問しているのを見たことのない人はほとんどいないでしょう。しばしば、小さな子供を連れて訪問している婦人もいます。彼らは「エホバの証人」(ものみの搭聖書冊子協会)と呼ばれるアメリカで生まれた新興宗教です。
1.歴史
この宗教は、アメリカ合衆国において、チャールズ・テイズ・ラッセルという人物が、1870年代に独自の教理を打ち出し、伝道活動を開始したのに端を発します。1881年、「シオンのものみの搭冊子協会」(現協会の前身に当たる)という団体を設立、ラッセルが初代会長になります。
その後、1917年、二代目会長ジョセフ・F・ラザフォードが就任し、組織体制の強化、訪問伝道による布教方法の確立、生活上の新たな規制(クリスマスや誕生祝いの禁止など)などを行います。1943年、三代目会長にN・H・ノアが就任し、世界的な組織体制の確立を果たします。1977年、四代目会長としてフレデリック・フランズが就任しますが、その前頃から、「統治体」と呼ばれる複数指導者たちによる指導体制に移行していったようです。
2.特徴的教義
その教義内容は、その歴史的過程において様々な変更が加えられてきているので、その経過をたどっていくとなると困難な作業になりますが、その特徴はやはり終末論にあると言えるでしょう。「もうすぐ終りが来るからそれに備えよ」ということを、いろいろ形を変えながら繰り返してきています。
1914年、1925年、1941(2)年、1975年といった年代を挙げながら、ハルマゲドンが来るとか、すべての国々が滅ぼされるとか、アブラハム、イサク、ヤコブが復活して現れるとかいったことが主張されました。そして、その年代が来てもその通りのことが起こらないのに対して、いろいろな説明をつけて、また新たな年代を提出するということを繰り返しています。
現在は、特定の年代を提出することはしていませんが、1914年、既にキリストは天において目に見えない形で支配を開始しているので、もう間もなくハルマゲドンが来ることは間違いないことだとされています。その時が来れば、何が起こるのでしょうか。
彼らは、現在の世界がサタンの支配下にあることを強調します。政治、宗教、商業組織のすべては、サタンの影響下にあります。従って、ハルマゲドンの時には、キリストが地上のすべての組織を完全に滅ぼします。そして、その時に生き残った者たちが、地上での楽園での生活を始めることができるのです。
誰が、ハルマゲドンで生き残る資格を得るのでしょうか。この地上で唯一神に是認されている宗教組織(もちろんエホバの証人のことです)に加わり、その要求する集会出席や布教活動を従順に行ない、様々な生活上の規制も守り、それらのことを通して神への忠実を証明する人がその資格を得ることになります。
3.布教方法
彼らの教義上、布教活動は非常に重要なものです。彼らは、バプテスマを受ける条件の中には、布教活動を行っていることが含まれています。布教活動をする者でなければ、ハルマゲドンで生き残ることはできません。
彼らは、戸別訪問以外の方法で伝道活動を行っているキリスト教会を非難しています。なぜなら、それが聖書で示された唯一の方法だから、といいます。
彼らは、その会衆(キリスト教では教会にあたります)の担当地域をいくつかの区域に分けて、グループ単位で区域を割り当て、計画的に一軒一軒戸別訪問を繰り返します。彼らの目的は、訪問を通してできるだけ多くの人を継続的定期的な教義学習に導くことです。聖書研究と呼ばれるものですが、実際には彼らが用意した書籍を使って彼らの教義を教え込むものです。
一通りの学習が済めば、各種集会に誘います。日曜日の午前又は午後(2つ)、火曜日(1つ→現在は廃止)、金曜日(2つ)の夜とに定期的な集会があってそのすべてに参加するよう指導されます。そのような集会を通して会衆のメンバーとして定着させ、やがて彼らにも布教活動に参加させます。そうして後、更にいくつかの条件をクリアして初めてバプテスマを受けることができるようになります。
バプテスマを受けた後ももちろん、布教活動を続けなければなりません。月に60時間以上(現在は50時間以上)すると「補助開拓者」、月90時間以上(現在は70時間以上)の布教活動に加えて様々な条件をクリアした人が「正規開拓者」と呼ばれるなど、ランク付けがなされています。
彼らは、布教活動に時間を割くために、職業を変えたり、家庭のことを犠牲にしたりします。あらゆる犠牲を払っても布教活動を優先させようとします。このことは家庭破壊の重要な要因の一つにもなっています。
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