中学生頃になるとそれぞれ自我に目覚め、証人の教えよりも世の人たちとの交わりの方に楽しみを見出し始めます。
両親は私たちの育て方を誤ったのでしょう。
32年も熱心に教えを信じ続け、人一倍厳しく子供たちへエホバの証人の教えを叩き込んだのに、振り返ってみれば誰一人残っていませんでした。
二男は分かりませんが、少なくともほかの3人の兄弟はエホバの証人の教えを一度も信じたことがないのではないかと思います。
もちろんハルマゲドンに対する恐れの気持ちは多少ありましたが。
長男は中学に上がったころから両親に反抗的な態度をとるようになり、家に寄り付かなくなり、世間で言う非行少年グループに属し徘徊するようになりました。
あせった父親は長男を探し回っては引きずり戻し、また逃げ出すの繰り返しです。
少年グループといる所を父親から引き離され連れ戻されるのですから、仲間うちでの長男の立場も辛かったのではと思うのですが、幸い長男にとっては世の人の友人の方が温かかったようです。
長男はそれからもずっと中学時代このような生活を続けていました。
そんな中でも兄弟の中で一番学力の低かった長男を心配し、街中で塾を開いていた(対象はエホバの証人の子供だけでしたが)証人の兄弟の塾に毎週抵抗する長男を連れて行っていました。
それすらも逃げ出して警察のやっかいになるなどを繰り返していましたが。
私たち兄弟は、金銭的な問題もあり、公立高校に合格しなければ高校にすら行けないという恐怖がずっとありました。
大げさな、夜間の定時制高校でも通えばいいではないかと思うかもしれませんが、その頃の私にとっては公立高校の受験に失敗したときには自分の人生のすべてが終わると思ってました。
今思えば父親も矛盾しています。
その時の父親の心境を確認したいぐらいです。
高等教育は必要ない。
しかし現代に生きる上でせめて高校だけは出ておかなければいけない、金銭的余裕がないために公立に受かってもらわないと困るから、と証人の兄弟が開いている塾に送り迎えするのですから。
そのような父親の努力の成果か、長男は無事公立高校に合格して通い始めます。
しかしすぐに問題を起こします。
校内での喫煙が発覚し、謹慎処分を受けたのです。
証人である両親にとってはただの喫煙ではなく大問題です。
今はどうか分かりませんが、当時は排斥に当たる重大な罪だったからです。
最初の子供、初めての問題であったために対処に悩んだ父親は馬鹿正直に会衆の長老たちに報告したそうです。
長男に悔い改める意思がないことも。
そのため長男は排斥処分を受け15歳にして親元を離れることになります。
何故そのような極端なことをしたのか、私が大人になって消滅してからもしばらく理解できずに悩みましたが、排斥されたものはたとえ親兄弟でも必要以上の接触は避けないといけないのですね。
なんという教えなのでしょうか。
これが愛にあふれる宗教なのでしょうか。
会衆で長男の排斥処分が発表される集会の日、私たち他の兄弟は(確か母も)集会を休むように父から言われ、父一人で出席しました。
その場で父は泣いたそうです。
結果、長男は父が探してきた東海地方の住込みの自動車部品工場で働くことになります。
驚くことに、出発の日、その土地まで父が一人で送り届けました。
どんな神経なんでしょうか。
我が長男です。
まだ大人になりきれてもいない子供を一人見知らぬ土地に置き去りにすることに対し、その時宗教への疑問を感じない時点でもうすでに重度のマインドコントロール状態であることは間違いありません。
つづく