ベトナム人と交流していて時折印象を受けるのは、彼らの愛国心の強さである。
以前在日ベトナム学生青年会(Visa)のテト(旧正月)パーティに招かれた時のこと
ベトナムの英雄と呼ばれる画家である盲目の老人が招待されていた。
彼は抗米戦争(ベトナム戦争)に北軍兵士として参戦し、戦闘中に目に銃撃を受けその場で目から流れる血でホーチミン氏の肖像を描いたという伝説をもっており、その際も壇上でホーチミン氏の肖像を描かれた。
日本人の私から見ると多分にプロパガンダ的な印象を受けたのであるが、参加している留学生たちは非常に感銘を受けたようであった。
又ベトナム国内で同年代と知り合い語り合っていると、それまでさんざんバカ話しで盛り上がっておきながらホーチミン氏に対する賞賛の声を聞かされることがよくある。
(ベトナム戦争の戦後処理の問題があったためかホーチミン市周辺ではまったく聞かない、中南部のニャチャン以北)
太平洋戦争に敗戦し、それまでの指導層や歴史が否定された日本と異なり、近代においてフランス、アメリカ、中国の大国に勝利しているベトナムは多数の犠牲者を出した戦争を含めた国の歴史が正義として教育されているであろうことが大きな理由だと思われる。
わずか10年前までは世界最貧国の1国であり、いまだに10%近い貧困層をかかえる国であることもあるが、ふだんはへらへらしながらも、国のため、共同社会のために自分がなんらかの役割を担わないといけないという意識が彼らには強いような印象を受ける。実際にベトナム国内の災害などでも在日留学生がアルバイトなどで厳しい生活の中から募金をして数百万円を集めることもあるようである。
排他的なナショナリズムほど醜悪で厄介なものはないとは思うが、ベトナム人の自分たちの社会のために自身の役割を担うという意味での愛国心の強さは日本人には弱い点であり、今後彼らが国際社会で大きな役割を担っていく際の大きな強みのひとつであると思われる。
サイゴンから来た妻と娘 (文春文庫 こ 8-1)/近藤 紘一

¥520
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ベトナム戦争末期に産経新聞の特派員としてサイゴン(現ホーチミン市)に生活し
幽霊長屋の長である子連れ女性を再婚した著者によるノンフィクション作品
サイゴンでの妻との出会いから親子3人での東京での生活に舞台を移し、日本でも
たくましくベトナム流を貫く妻と、思春期の娘との生活をユーモラスに描いている。
特に子育て、食、ペット等生活の側面からなベトナム人、ベトナム社会について深い
洞察がされており、ベトナムと関わる方々にとっては必読の書といえる。

本書は、著者が38歳の時に出版されているが、今回レビューのために読み返してみて、
私と同年代でここまでの冷静かつあたたかい目線で物事を描けるのかと驚きかつ自身を
振り返り反省もされられた1冊です。

 
ハノイの純情、サイゴンの夢 (講談社文庫)/神田 憲行

¥720
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 ドイモイ政策が施行された直後の1992年に日本語教師としてホーチミンで
 1年間生活を送った著者の体験記
 当時29歳であった著者のベトナムでの恋愛や、生徒たちとの交流を通じての
 ベトナム人やベトナム社会の考察、又、日本語学校の運営者との対立から
 共産主義体制の色濃い当時の情勢や日本の援助の裏側などが描かれている。
 とくにベトナム人(南部人)の性格やしたたかさなどがわかるエピソードが
 満載であり、今後ベトナムとの関わりをもつ方々にとっては大いに参考に
 なると思われる。