誰のいたずらか……。

太陽と月、神経と血管のように、元来ひとつであったはずのものが、あえてふたつに分断され、たがいに働きかけぬ限りはその本性を顕さぬようなカラクリが、どうもこの世にはたくさん仕組まれているように感ぜられてならない。

星がチカチカと光り、生き物がせわしなくうごめき続けている、このいらだたしさは、そんないたずらのせいなのだろうか。

おのれもまた、誰かのいたずらで空虚に散りばめられた、何かのカケラであろうと思えば、あらぬ形に身をさらしたり、聞こえもせぬ音を捏造したり、という奇癖にも合点が行き始める。

存在と存在の間には、やりかかったまんまのパズルのように、実に多くの穴や裂け目が空いているように思う。

無性に他者が恋しいとか、踊らずにはいられぬようなむずがゆさは、そんなパズルを目の当たりにした感覚に近い。

 (櫻井郁也ダンステキスト2006)

 

これは2006年夏の『planB通信』に掲載された文章だが、時を経ても違和感がない。

このような心地が、このごろふたたび身体を揺する。

時間とともに言葉は去ってゆくわけでもない。

むしろ、言葉にすることで、ある体験や経験に質量や重さが生じて、身体という地層に堆積してゆくのかもしれない。

それが何かしらの力によって、また呼び起こされるのかもしれない。

 

 

 

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