子どもの頃から、大きな声、はっきりした言葉、といったものが全てでないように思ってきた。
ことさら何かを語らずとも言葉は言葉としてひそかに生きているものだし、
笑うことも悲しむことも、誰にもわかるような表情よりも、
ほんとうのうれしさかなしさは、ごく静かな表情のなかにあって、
本人さえ気がつかないほどにささやかで、
それは心の奥の非常に遠いところにこそ沸々としているのではないか、
と思うこともあった。
そのような気持を、この展示のなかで、ふたたび思い直していた。
すこしまえに、内藤礼氏の展覧会に行った、そのときのことだった。



会場の水戸芸術館には、国内有数の素晴らしいコンサートホールや劇場があるし、過去にワークショップをさせていただいたこともあり、他県の施設のなかでは何回も行った親しみあるところだった。この展覧会が開かれている現代美術ギャラリーも、やはりよく覚えていたが、今回は、はじめて訪れたような気持になった。

展覧会そのものが作品ということだと感じた。
それは考えとしては当然のことかもしれないが、その考えが理解できるのと皮膚感覚として感じるのでは、ちがう。

具体的にあれこれ書くと良くないから書かないが、なにかを「見せ」るというより、そこにあるすべてを「感じる」ことができる空間だった。
感じとるほどに、たくさんの感覚が動きはじめるようだった。

展示されているものもその位置もデリケートで、そこを訪れる私たち自身もデリケートにならざるを得ない。
知覚がふだんよりすこし敏感になってゆくのが、わかる。
そして、大切にしていることをたしかめることができる。

実に気持良かった。




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Stage
櫻井郁也ダンスソロ新作公演『白鳥』9/29.Sat.~30. Sun. 2018
Sakurai Ikuya dance solo "SWAN"
29th and 30th Sept.2018 at plan-B Tokyo


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