過去に上演したダンスは必ずしも終わっていなくて、長く時をおいてから鮮明に蘇って現在の取り組みに影響を与えることがある。

先の頁に掲載した写真もそのようなことを思わせてくる作品のある一瞬、2009年に横浜で行ったダンスパフォーマンスの1シーン。

企画とインスタレーションと映像は美術家/写真家の今井紀彰氏、会場は旧関東財務局。
昭和3年に建てられたクラシックな洋風建築のビル、その一室だった。

部屋一面に張られた水のなかで踊った。
身体は水面に波と音をたて、そこに曼荼羅と都市の映像が映し出される。
水は山梨から運んできた名水だった。
真冬で水温が低く、足の腱が切れそうだったが、それが偶然の身体感覚と緊張感を生んだ。

およそ10年が経つけれど、そのくらいの時間をおいて一つのダンスが内面で変化してゆくことは多々あるし、時間を経て反芻された体験が現在の衝動に絡まって新しい作品を生み出してゆくことも珍しくはない。

一日が過ぎるのは早いが、ある経験が何かしらの力に結びつくのには、とても時間がかかる。
最新の作業の底には、とても古い経験も流れているに違いない。

新作の稽古がかなり進んで、上演は秋を目指している。



写真 photo

公演 Stage

レッスン lesson