いなづまや闇の方ゆく五位の聲
春なのに冬のような雨が降ったこないだは、朝から黒に近い空だった。雲ばかり眺めていると、ふと裂け目ができて、無理矢理に明るいような陽射しがあり、すぐに消えた。そのあとしばらく、遠雷が何回も何回も何回も鳴っていました。
どどお、どおおん、、、
という、その音に眼を閉じていると、それは雷と知っていても何か不吉なものおと、あるいは見知らぬ獣のおめき声か
、なんて、あらぬ妄想をしてしまい、
なんだか骨の中からも寒くなり、漠たる不安さえさざめきはじめ、ああ眼を閉じなきゃよかった、眼を閉じたから色々なものが見えて怖いんだ、と、少し困っていましたが、そのときもふとこの句を思い出したのでした。
イナヅマヤ、、、。
あるとき稲妻が走る、そちらを見れば暗雲がひろがり、その中を五位鷺が不気味な声を張り上げなら飛んでいて、だけど、その姿は見えなくて、、、
という情景でしょうか。松尾芭蕉のひとつですが、あらぬ幻想をかきたてるような、ぞわぞわした言葉の力があって、なんだか非常に興味がわくのです。
迫る闇の奥から無気味に閃光を放っている稲妻と、光の奥から何か声がきこえて、という感じが、湿度や温度さえも孕んで言葉が生きているようで、とても近しく思えてならないのです。
きょうはとてもいいお天気ですが、、、。