断片・早春の

梅の花が咲いている。
あそこに、ここに、、、。

冬のあいだこらえていた何かが、小さな花、その、ひとつひとつ、になって、樹木の内側から、一気に、解き放たれてゆくみたいに、あかく、あかるく、こちらに向かってくる。

こちらはこちらで、やはり何か緊張の糸が、ふつりと、とけたような、つい先ほどまで、あれこれと気に病んでいた様々が、実に小さなことだったように、軽みを得て、皮膚からすうっと、消えてゆくような気になるのだから、花のチカラとは本当に優しい、ちから、なのだなぁと思ってしまう。

そして薄暗いところから、あかるい方へと、次第に押し出されてゆくものを、急に、からだの側から、感じてしまう。

それは、色や、溜息や、うたや、カーブに現されるような感じで、どこか奥の方から、ふくらんでくるようだ。

冬の地底に眠っていた、時間のたねが、木の幹を通って、小さな花のひとつひとつになって、この地上に、溶け出そうとしているのだろうか。

それと一緒に、骨の底に眠っていたものが、さまざまな、からだの細胞を通り抜けて、暗いところから明るみの方に、解き放たれたいと、うごめき始めるのだろうか。