迷うときには、困ったときには、ゆっくりと呼吸してみる。
何かうまく出来ないときには息の仕方を変えてみる。
吐いていたところを吸ってみる、溜めてみる、テンポを変えてみる、それだけなのだが、不思議と改善のきっかけになることが多い。
呼吸に助けられることが、何かとある。
レッスンでもアップ中にメンバーから呼吸に関する話がでて、ずいぶん稽古が膨らんだ。
呼吸のトレーニングは土曜午後の基礎クラスで毎回たっぷりやる。全ての動きに、呼吸のテンポや長さや深さがセットになるようプランしているのだが、それらが、振付を踊ったり自由に踊るときも、次第に意識されるようになっているのかな、と嬉しくなった。
呼吸は姿勢を変える。腰痛や凝りの改善にも、横隔膜の運動や血流にも、深く関係している。もちろん心理面での変化は大きい。
ダンスそのものが、瞬間瞬間の呼吸を活かすことから大きく変わる。
身のこなしも表情も呼吸で変わる。
呼吸は踊りの原動力になる。いや、踊りは呼吸の変化そのものとも言えるかもしれない。
呼吸と力の関係、呼吸と体の仕組み。
呼吸と知覚、呼吸と気持ちの変化。
呼吸とリズム、呼吸と言葉、呼吸と音楽、呼吸と空間の広がり、呼吸と時間の流れ。
呼吸と自我、呼吸と他者、、、。
興味を広げれば、きりがないほど広げられる。
しかし呼吸は身体の記憶そのものだから、実際の動きのなかで掴む以外、ない。
誰しも生きているかぎり呼吸している。
息を、吸う、吐く、止める。というが、実際には呼吸はパターンではない。ケースバイケースで変化をする。一人一人ちがう。
無意識のうちに精妙なバランスをとって無数の吸う吐く止めるを融合している。それらはダンサーひとりひとりの表現力や魅力を生み出している。
いろんな人の稽古に関わらせていただいていると、大胆に踊る人は皆さんたっぷりと息をされている。何でもすぐに声に出さして話して下さる方は息がしっかりしていて、楽しそうに踊られる。いい呼吸が体感/体験で掴めると、踊る楽しさも倍増するようだ。
踊りだけでなく、日常生活の快適さも呼吸ひとつで実際に変わる体験が僕もあったし、まわりの人からもよく聞く話だ。
たっぷりと呼吸してゆくだけで、身体に力が満ちてゆくのだ。自信や勇気も出るのだろう。
でも、浅い息が癖になると、いつも緊張がとれない。体も硬くなる。横隔膜や胸は特に硬くなって、さらに息が浅くなってゆく。気が小さくなる。
溜息ばかりついて力も逃げて暗い気持ちを呼び込むだろうし、コミュニケーションも浅くなる。イメージ力も浅くなるようだ。
広げれば、こうやって書いているのも、たったいま読んでくださっているのも、一種の呼吸なのかもしれない。
書く、読む。話す、聞く。奏でる、聴く。は勿論、あらゆる表現は受け応えなのだから、その根底には、呼吸があるのではと思う。
呼吸、それは「息」であり、「活き」であり、「生き」であるのだろう。
毎日、一日にどれくらい呼吸するのだろう。一生のうちに、どれくらい呼吸するのだろう。
数え切れないよ、と思うとそれまでだが、たぶん限りある。
あと何回くらい僕は息をするのかな。
一回の呼吸をどれくらい大切にしているかな、と、振り返る。
そろそろ稽古に。さて、深呼吸、、、。