新海誠監督の『君の名は。』まさに評判通りでした。

恋の映画を見て率直に感動したのは、こんなの何年ぶりだろう。
流れ星の映画だが、この映画自体が流れ星だ。

美しい、涙が出る、ハラハラする、ときめく、泣いている、笑っている、、、。全部あったのです。こういうことだよなぁ、と、とても思ってしまった。

映っているものにも、その向こう側にたぶんあるものにも、日常への愛おしさや、この場所への肯定ゆえの感情がずうっと静かに波打っているみたいに感じた。

日常を揺るがされるような色々な芸術や映画に出会いながら何かどこかで心から頷くことが出来ず、むしろ日常の衣食住から始まることやその根っこにある大事なものを探したくて踊っていたが、そこにとても重なる何かを感じた。

こういう感じ、同時代っていうのかしらん。

この映画を見たら、遠くへ行きたくなることよりも、しっかりとココに居たくなる気持ちの確かさを感じたし、いまこの場所にいま爽やかな風が吹いていることの素晴らしさに、ハッと気がついた。たぶん暗闇の中では10代に戻っていたのだった。

四ツ谷に新宿に千駄ヶ谷、東京の街角がたくさん映るが、美しい。
街が人を見ている感じ。
僕らが囲まれているそれらは全ていつ壊れて消えてもオカシクナイことを、僕らはもう感じている。

イマというのがスグに無くなることを感じているから美しいと思える。無くなる前のイマを感じるから生きていることも感じる。

美しいというのは美化じゃなくて、この一瞬を受け止めている貴重さの証しだと思う。

好きで住みついて生きてきたこの街をこんなふうに映してくれた映画は小津安二郎東京物語以来だけど小津の東京は僕らの東京でなかったから初めてだ。

この映画には肯定から始まる何かがある、と思った。それは、たぶん批判から生まれる何かを超える。

たぶん僕は二度目を観に行く。