まさにダンスだ。そう思って観たのは少し前にパリ・オペラ座バレエ団の『レイン』がテレビ放送された映像で、観ている目から鱗が落ち、身も揺れた。

音が弾み、その音一粒にコネクトする喜びがダンサーの身体から溢れ、呼吸され鼓動し続ける。音も動きも、生まれ、出会い、別れを惜しむように戯れて熱し冷めまた熱をはらみ、戯れからまた音が生まれ、動きが生まれ、名残惜しく消えて、散るとまた生まれる。季節と花の関係のように。出会い別れる人々のように。

ダンサーたちはとても明るくて、時の流れがスピードにスピードを加速し続ける。サクサクと空間を切る人と人。カラダとカラダが出会い尽くす情景。男と女、女と女、男と男、カラダとカラダ、温度と温度、、、。その雰囲気、その造形美、そのリズムや戯れ。涼しくて暖かくて、新しい何かが始まる予感が漂ってくる、風が吹くように。ミュージシャンも誰一人として停滞を知らない。突き抜けるハイウェイを疾走するような音楽。木琴や鉄琴による果てしないキャッチボールにヴォーカルや管楽器が微分されたような呼吸の断片を思い出したように吹きかける。音はいつも流れていて同時に細かく細かく途切れ続ける。音また音、踊りまた踊り。ただ踊り、ただ奏で、ただただ出会い、ただただ別離して、ふとまた再会する。ダンスと音楽は長大に淡々と続きいてサラリと終わる。正確さ、軽やかさ、一定さ、それは実は神わざだ。

『レイン』は、ベルギーのダンスカンパニー「ローザス」の振付家アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの代表作であり、音楽はアメリカの巨匠スティーブ・ライヒの又々代表作。この作品を観たのは初めてでなく、この音楽は長く親しんでいる。なのに、初めて心から嬉しくなった。

踊る喜び、奏でる喜び。「共に」という喜び。それらが、とてもリアルで、人と人の信頼関係の力強さや、絶えず何かが始まり続けてゆく空気感が爽やかで、なんだか希望を喚起されてゆくようだった。