もう一度見たいと思っていたドキュメンタリーが放送された。内容はショパンコンクールの舞台裏、調律師たちの勝負だ。

ダンスはスタッフや劇場とのチームワークだし、小説は編集者や販売者とのチームワークだが、ピアノ演奏もやはりチームワークなのだということが、ガッツリ伝わってくるエキサイティングな映像。

ピアニストは楽器を奏でるが、調律師は楽器そのものに命を吹き込む人だ。さらに楽器製作者がいて、調律師と楽器製作者は親密な作業を重ねている。


ワルシャワの深夜に調律師はピアノを解体し、音そのものを精密に仕組む。朝とともにピアニストが楽器を選ぶ、すなわち一人の調律師の音と組む。

ショパンの心を音色に託す調律師があり、空間を鳴らし切る音を仕掛ける調律師がある。楽器メーカーは、これぞという調律師に社運を託す。様々な人が、音を巡って人生の賭けに出る。

老舗スタインウェイに対するヤマハそしてカワイ。百戦錬磨の常連に新規参入を果たすFAZIOLIは百万人に一人の耳と言われる男をワルシャワに送り込む。
ショパコンを支える4台のピアノと4人の調律師。その3人までをも日本人が占める。

5年に一度のショパンコンクールは、音そのものの競演でもあることが、見えてくる。

人は何故、かくも響きを求めるのか。
そこに想像力が広がる。