地から上がってくるもの、空から降ってくるもの。

目に見えない耳にも聴こえないのに、
感じるとしか言いようがないそれらを血と肉は受け止めようと足掻く。

舞台まで十余日となり、過ぎる一刻が酷く惜しい。それでも読んでしまう本がある。
『チェルノブイリの祈り』がその一つだ。

直接的にではない、しかし、いま取り組んでいるダンスと、あるいは、このからだと、どこか通じ重なり合うものが、この本にはあるような気がしてならない。他者の言葉を通じて自らの奥底を垣間見るようでもある。

感覚を超える何かについて、罪について、嘘について、生活について、愛について、沈黙について。

遠ざけることができないもの。

作者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチはベラルーシの人。
彼女の国の南に放射能汚染による広大な封鎖地区がある。
2015年のノーベル文学賞は彼女に与えられたが、その著書は沢山の人への取材が実ったもの。

他者に耳を傾けた言葉。
対話する人の文学。

勇気を出して懸命に語りかけたからこそ聴きとることが出来た言葉の数々。

感じることから何かが始まる。
他者の浸透。

ダンスもどこか近い。


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